Makiko

煙突の見える場所のMakikoのレビュー・感想・評価

煙突の見える場所(1953年製作の映画)
3.4
田中絹代がなにか物を置く時に安定しなくてガチャンとなったり、芥川比呂志が噛んだりするのが計算なのか偶然なのかわからないが面白いと思った。アクシデンタルなものがあってこそのコメディって感じ。

赤ん坊の鳴き声、競輪場の喧騒、放送局のスピーカーから流れるアナウンス、隣の家の子供たち、手前の家の祈祷師夫婦のドンチャンさわぎ等、とにかく音がうるさい映画だった。前半で常に何かが音を立てているぶん、後半の赤ん坊の看病のシーンがシーンとしていて(ダジャレじゃないですよ)印象に残る。

物語の中心となるのは上原謙と田中絹代の夫婦だが、個人的にはその家の上の階に暮らす独身の男女のやりとりの可愛らしさにキュンだった。芥川比呂志の真面目なおバカ(?)青年が、大事なことを何でもジャンケンで決めようとしたり、自分で自分への警句を紙に書いて壁に貼っているせいで、隣の部屋に住むしっかり者な高峰秀子に全てを見透かされて色々ツッコまれているのが微笑ましい。

ラストのカット、ギュッと集まった状態で4本に見える煙突がよい!!それまでは1本に見えたり2本や3本だったりした煙突が最後の最後で身を寄せ合った形で見えるのは、今考えるとあの下宿の4人を表しているような……。
あの煙突って今でもあるのかなぁ(現代っ子)なんて考えていたら、大正から昭和にかけて27年間しか稼働していなかったらしい。この映画以外にも、『東京物語』や『女が階段を上る時』などの作品に背景として登場しているとのことで、言われてみればたしかに見覚えのある煙突だ。
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