はっぴいえんどは僕の好きなバンドのひとつだ。
NHKのムジカピッコリーノという少し不気味なアニメで楽団の方が”風をあつめて”を演奏していたのが初めての出会い。NHKは時間に応じて再放送をしがちなのでこの曲は何度か聴き、記憶に残っていた。
はっぴぃえんどという幻のバンドによる名曲であることは後に、再び聴く機会があった際に知る。高三のゴールデンウィーク。気分転換に高校の教室で勉強してた時のことだ。どこか聴き馴染みがある上ラジオから流れる独特なレトロさが刺さった。誰かに知って欲しかった。勉強そっちのけで他のクラスの誰かの机の端っこに鉛筆で、
「はっぴぃえんどの風をあつめてって曲聴いてください!」
と書いた。
まだ高校生だったから携帯も持っていなくて、受験生だから周りに友達もいない。苦肉の策の発信である。
ゴールデンウィークが終わり、学校が始まり、1日の終わりのチャイムが鳴り、部活を終えた後、ドキドキしながらこっそり教室へ向かう。さて、問題の机の上では何が起きたか。
「聴いてみました!いい曲ですね!」
返信があった。それもブサかわいい絵文字を添えて。
後日分かったことだが、(というのも気になってすぐ調べたことだけども、)偶然その机は、僕が当時一目惚れから恋をしていた女の子の机だった。
この先のストーリーは長くなるので割愛するけれど、僕にとってはこの曲はアンバランスで現実感のない、高校での恋愛のイメージソングというわけである。
さて、この映画は好きな類だけれど、風をあつめてのイメージとは少し違う。曲の中身を知らないからあまり主張できないけれど、低音ボイスで気だるい感じで歌うこの歌は、人生を楽観視してるようなところが、少なくとも僕にとってはある。ヒッピーみたいな軽くてふわふわな格好で東京を歩いてるイメージ。連想される色は夕暮れのオレンジで、市電が図書館の前を通り過ぎる。ゲラゲラ笑っているけどほんとは一途な恋愛をしてる僕。みたいな。
つまりこの映画とは正反対の曲というわけで、しかしむしろその不調和さがこの映画の良さを引き立てているのかもしれない。
あんまり記憶に残る映画では無さそうだ。でも僕は、女の子が少しずつ芽生える恋愛感情に葛藤する姿が見ていて心地よかった。雨の中探しに行くシーンと、最後のキスしてくださいのシーンは好きだ。
P.S. セックス中に言葉数多すぎる、流石に萎えるからやめてくれ