鹿苑寺と慈照寺

先生、私の隣に座っていただけませんか?の鹿苑寺と慈照寺のレビュー・感想・評価

4.5
【佐和子が隣に座りたかったのは誰なのか?】

佐和子(黒木華)と俊夫(柄本佑)は共に漫画家。佐和子は売れっ子で、連載作品がようやく最終回を迎えた。俊夫はかつて人気漫画家だったが、新作を書けずにいた。おまけに佐和子の編集者・千佳(奈緒)と不倫中。
そんなとき、佐和子の母親が怪我をしたとの連絡があり、佐和子と俊夫は母親のところに行くことに。佐和子は実家で運転免許を取ることになり、自動車教習所の先生・新谷(金子大地)と出会う。新谷との出会いにより佐和子の次回作のテーマが決まる。それは不倫。
俊夫は千佳との不倫がそのままネームになっていることに動揺する。物語はさらに佐和子と新谷の不倫が描かれる。
この漫画は創作なのか、現実なのか?

冒頭の黒木華さん、柄本佑さん、奈緒さんの演技からして最高。微妙な目配せと、観る人に何かを感じさせる空気感と表情。ここでもう一気に惹き込まれたんですけど、その後の会話劇も本当に面白い。

佐和子が俊夫の携帯を借りて千佳に電話するシーンの緊張感も、車内で次回作のテーマが不倫だと告げられたときの俊夫の「だいぶ方向性、違うね」というすっとぼけているようで実は動揺しているシーンもとにかく面白い。

ネームの第3話のところで漫画とリアルの描写が重なっていく。このあたりのシーンから現実と創作の見極めが難しくなる。佐和子が新谷といるときは明らかにオシャレをしているのはポイントだと思う。イヤリングも何度も登場している。

物語が急展開するのは、一人でドライブに出かけるシーン。またオシャレをしている。そしてスカートにイヤリング。

終盤にかけてとにかく千佳がやばすぎて笑ってしまった。まさか佐和子の実家に転がり込んで泊まるとは……。すごい神経してるよ。
千佳の「この漫画が世に出て困るってことは私と不倫してることを認めることになりますよ?」という台詞もなかなかのクレイジーっぷりだ。

先日観た「鳩の撃退法」よりも現実と創作の境目は判断がつきやすい。かなり親切設計になっていて良かったと思う。ネームに現実が追いついたときに千佳が「続きは現実でってことですかね」と言っていたしね。

劇的な展開の漫画にしようとして、千佳がそれだけ?と薪をくべるシーンが最高でした。笑

劇的な展開ではないけれど、オチのところで捻りを効かせていて見事。素晴らしい。
タイトルの意味についても終盤で師弟関係のことを指しているとわかったかと思いきや、ラストでさらにツイストしてくるとは思いませんでした。
素晴らしいです。最高でした。面白かった!!!

初めから許す気はなかったんでしょ?と問われたときの黒木華さんの怪しげな微笑みもたまらなかったです。あわよくば、奈緒さんに振り回されたいです。