名波ジャパン10

エンドロールのつづきの名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
3.8
パン・ナリン監督が映画の道を志した自らの幼少期を描く自伝的作品。映画監督誰しもが自らの子供時代を描きたいという欲求に駆られるのでしょうが、観客にとっては他人の思い出話に付き合わさせられる訳で監督の思い入れが強ければ強いほど逆にシラけがちになりかねません。この作品もパン・ナリン少年が映画に目覚める前半部分はウンザリ感無きにしもあらず。ただ、あえて時代背景を30年近くもずらして描いた終盤の映画デジタル化のエピソードは全く別の映画。フィルム映画の映写機材が溶解されてスプーンに生まれ変わるシーン、映画フィルムも溶かされて合成樹脂のブレスレットに生まれ変わるシーンは、その過渡期を経験した映画人の複雑な心境が象徴的に描かれています。女性達の様々な色を組み合わせたブレスレットにそれぞれの配色からイメージさせる監督達の名前を被せるラストシーンは秀逸ですが、そこまでの約2時間の凡庸さを相殺してお釣りがくるか評価の分かれるところだと思います。