よどるふ

エンドロールのつづきのよどるふのレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
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世界を見つめるのは、他の誰でもない“自分自身の目”であることについての映画だ。鑑賞中、色の付いたガラスを通して世界を眺める主人公の少年に対し、「さあ、きみの目から見える世界について教えてくれ」と思わず心の中で語りかけていた。

人物の感情の動きをダイアローグに頼らず観客に伝えようとしていることが伝わる映画でもある。特にセリフの量が少ない主人公の母親に関しては、言葉ではなく、主人公に手渡す弁当の調理シーンをじっくりと見せることによって、主人公に愛情を抱いていることを表現していた。

そんな愛情を注がれている主人公の少年はスクリーンに映し出される映像に魅せられ、その映像の元に“光を出す機械”があることを突き止める。その“光を出す機械”=映写機を操る映画技師の男性とも仲良くなり、やがて少年は映写機を自らの手で作りだそうとしていくことになる。

元からある映写機を、今度は自分の手で作り出す。では、そんな“手作りの映写機”は、単なる“車輪の再発明”に過ぎないのか。そうではない。少年は元からある“映画”を自分の目で見つめ、それを自分の中で捉え直し、“映画”が与えてくれる喜びを自分なりに定義しようとしている。

例えば、盗んだフィルムロールからフィルムを引き伸ばして、仲間たちと一緒にフィルムに刻まれた映画の“すべて場面”を空の下に晒す場面。あれこそ、映画が元は「場面の連続体」であり、「“時間”の芸術」であることを解体するスペクタクルなシーンであり、たいへん興奮した。

“元の形”のあるものが、状況によって用途が変わっていく過程は、主人公たちが映写機を作り上げていくシーンもそうだし、終盤にある工場見学のシーンでも描かれている。ラストの着地は、先に観たデイミアン・チャゼル監督の『バビロン』とも重なるところがあるのが面白い。
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