プリウス

コーダ あいのうたのプリウスのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.7
いい映画だし題材もいい。
トーキーでこれだけ沈黙のある作品なのにそれを感じさせない雄弁な手話と表情による会話の応酬を見せる登場人物、キャストも素晴らしい。
そのチャレンジングな作品を2時間以内にまとめ上げ、登場人物にイキイキとした生を吹き込んだ監督、そして意欲的な本作に作品賞を与えたことにも拍手。

ただ、エンタメ映画としてもっと頑張れるところもあったような気がする。
特に、主人公に魅力と熱量を与える恋愛のプロットがややチープ(ありきたりな展開は許容するが、和解がどうも急に感じてしまった。その意味で急に丁寧さを欠いた印象。)さを禁じ得なかった。

映画として好きだったのは、
・兄(もちろん両親もだが、特に)を通じた、月並みな「障がい者」のステレオタイプを揺さぶる生であたりまえの聾者の描写。
・2時間を切る上映時間
・発表会での唐突に音を途切れさせる演出。作頭から聾者の世界に寄り添って「理解を持った」人として鑑賞していた鑑賞者を問答無用で聾者の側に立たせる「音楽コンサート会場での無音」という描写を通じた聴覚体験によって、「わかった」気で見ていた自己に気付かされ、これまでのシーンを逡巡せざるを得ない気持ちにさせられた。この演出は白眉。
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