ぜにげば

劇場版 呪術廻戦 0のぜにげばのネタバレレビュー・内容・結末

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
1.3

このレビューはネタバレを含みます

呪術廻戦が好きな人にとっては多分なんのメリットもないので、見ない方がいいと思います。
読むなら、不快になる覚悟で最後まで読んで欲しいです。
文末に一番大事なことを追記したのでそれを先に読んでもらうぐらいでもいいかもしれません。

生粋のジャンプっ子の僕が、初めて明確に嫌いだと思った作品。
それが呪術廻戦です。
なぜ嫌いなのかとかはアニメ第1期のレビューと各話のコメントを見れば分かって貰えると思うのでそちらをご覧下さい。

ジャンプの看板王道バトル漫画を嫌いになるという体験は僕にとっては初めてで、かなりショッキングでした。
なので、当時自分なりに真摯に呪術廻戦に向き合っていたというか、そうせずにはいられませんでした。

今更この作品を見た理由は、呪術廻戦に対する嫌いという感情が記憶と共に薄れてきて「今見たらどう思うか」と興味が湧いたからです。
まあ嫌いすぎて見れなかったというのもあります。

で、どう感じたかと言うと、
「やっぱり大嫌い」でした。

まず好きな点から書きます。
シンプルだけどリカちゃんに呪われてるかと思ったら逆でしたって展開ですかね。
1つの作品としてリカちゃんが成仏する結末は綺麗だし、設定としても面白く感じました。

あと菅原道真の末裔って設定は最高。
たまらんこういうの。

元が確か連載のきっかけとなる読み切りだったと思うので当たり前っちゃ当たり前だけど、初見でも分かるような作りになってるのはよかったです。

あとはまあ作画。
100億円越えの作品の中ではちょっと比較にならないくらいのレベルの低さではあるけど、戦闘シーンだけで言えばかっこよかったです。

ぐらいかなぁ。
自分が嫌いだなと思ったところ全部に目を瞑ったとしてもそんなに面白くはないというか、大した話ではなかったかなと。

ここからは不満点というか嫌いな所をストーリーの順に書きます。

1つ目
最初の英語の歌合わなすぎ。三味線奏でるとかでいいのに、なんで和からかけ離れたものを?笑
意図があるなら知りたいけど、和洋折衷するにしては無理やりだしなぁ。

2つ目
最初の真希とペアを組む件で、最初にパンダと棘のペアが発表される。その時点で99.9%2人が組むに決まってるのに、その時は無反応で、組めって言われた時に真希が「げっ」て言う。
馬鹿なん?
キャラが生きてない。
誰も言わないのやばいけどな…。

3つ目
最初に帳がおりる時に乙骨が「夜になってく?」と言う。

はぁ?

どう見ても膜のようなものが上から半球を描くように下へ広がっていってるでしょ。
少し光が遮断され辺りが暗くなることを“夜”に喩えたの?笑
かっこいいなぁ笑だいぶ遠回りしたね笑
それっぽい台詞回しさせた過ぎてキツイです。
ポエミーで嫌いです。

せめて作画はもう少し夜っぽくするとかやりようはあるのに。
これに関してはアニメーション側のミスでしょう。
当該のコマを知ってるわけじゃないけど、白黒の漫画なら成立してるセリフだと思います。
キャラが生きてると感じれない。
「夜の帳が降りたら合図だ」ってフレーズもあったから、隠語としてならまあ多少納得はできるけど、いずれにしろ夜には見えなかったからアニメーションのミスだし、だとしても初見の男の子がそう言うのはセリフとして変。

4つ目
棘についてパンダが「境遇としては似てる」と言うけど…ど、どこが?
今まさに「生まれた時から使えた」って言ってて、先天的であると。
で、乙骨に関してはリカちゃんが事故で死んだ時からだから後天的じゃん。
何を言ってるの?ほんとうに。
まあ言いたいこととしては「自分の能力のせいでそんなつもりは無いのに人に危害を加えてしまった」って所だとは思うし、確かにそれはその通り共通してる。
だから間違ったことは言ってないんだけど、文脈が意味不明。
「生まれた時から使えた」の次に「境遇としては似ている」は日本語下手すぎませんか?
ハンターハンターとかBLEACHとかエヴァみたいにかっこいい言い回しをしたいのは凄くわかるけど出来てないですハッキリ言って。
慮を筆で書いてその辺に貼った方がいい。

5つ目
やっぱりパクリ作品だと思ってしまう。(追記内容を見てください)
里香ちゃんは量産機だし、乙骨はシンジだし、何故か学長は蝶野。
意味がわからない。
里香があの見た目になる理由は何?それを描こうよ。

何度でも言いますが、そりゃどんなクリエイターだって誰かの影響下です。
100%オリジナルの作品なんてないですよそりゃね。
手塚治虫しか漫画描いちゃダメなのかみたいな話になっちゃいますよ。
だとしてもあまりに数が多いし、キャラデザだけじゃなく構図とかも同じな場合が多いし、恥ずかしげもなく突き進む。
プライドはないの?
100歩譲って構成要素の全てが他作品からのものだったとして、組み上げたものが今までにないものになってるならいいと思いますよ?
でもなってないじゃん。そのまんま見たことあるものをツギハギしたアンバランスな何かに仕上がってんじゃん。

1期を見た時は知らなかったけどどうやら作者さんがコメントを出してるということで一部を抜粋して書いときます。

『パロディやオマージュの線引きは、自分の中では明確な基準がありますが、それらは色々な人(今回の場合、伊藤先生)の優しさに甘える前提であることは否めません。
週刊連載のスピードで、後出しにもかかわらず今回のような描写を許してくださった伊藤潤二先生をはじめとした、各関係者の方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。』

まず思うのは、明確な基準があるならそれを示せよということです。
示さない限りは嘘かもしれませんよね。
クリエイターとして不誠実です。
少なくとも作品を見るだけでは僕にはあるようには感じられませんでした。これは僕の読解力不足かもしれませんが。
もし仮にその基準とやらが“敬意の有無”とかであるならば、それは敬意という一方的な感情を抱いたもん勝ちで何でもしていいことになるので明確でもないですし間違ってると思います。
それと、これまた日本語が少し難しいのですが、「後出しにも関わらず」というのは“事後承諾を得た”ということですかね。
掲載してから許可を貰ったということでしょう。
だとしたらアウトだと個人的には感じます。
事後である時点でクリエイターとしての矜恃の欠けらも無いなと思いますが、自ら許可を取りに行ったのではなく、注意されてから謝って許可を得た可能性すらあります。(普通ならこんな大量かつ直接的なオマージュはしないので、許可を取るのが簡単だったりその必要事態がなかったりするはず)
そうならないためにも事前に許可は取るべきだと思うのですが、僕の価値観がおかしいのでしょうか。
「ホテルに入っただけで一線はこえてない」と同等のズルさと意味の無さだと思います。

結果として「うずまき」に関しては許可を得てるようなのでとやかく言う意味もあまり無いかもしれませんが、なんせオマージュの数が膨大すぎてそれら全てにこれが当てはまるかもと考えるとゾッとします。

極端な話、これは作品を楽しむ側のリテラシーの問題でもあって、「それでも呪術廻戦」が好きだ!と思うのならそれでいいと思います。
甘える前提と自分から言えばなんか潔く見えるし、お礼を申し上げれば好感が持てますからね。


今作の「死んじゃダメだ」は笑えばいいんですか??
だったら「笑えばいいと思うよ」って言わせてみろよ。
言えない?それは何故?その2つのセリフの間に“明確な”基準がある?それってどんな基準ですか?
明確な基準を明確にして欲しいんだけどなぁ。
観る側もね。
流行ってるから「面白かった」。
ピンと来なかったけど波に乗らない自分が怖くてとりあえず「作画が良い」。
舐められてます。



最後に、原作は一応当時一通り読んでいて、まだアニメ化されてない部分で書きたいことがあるのだけれど、その為にアニメの2期を見るのはさすがに性格悪いアンチ過ぎるのでしません。
なのでこの場を借りて書かせていただきます。
というかただの類似点の羅列です。

プペルや100ワニの時に、「お金を払って観ていれば何を言ってもいい」と暴論を振りかざした人が、悪口を言うことを目的にお金を自ら進んで払って鑑賞し、ただただ悪口を吐き捨てたりしていましたが、そういう人にはなりたくない。
ただ彼らも、“お金を払っているかどうか”という基準を明確にしていたので、原作者さんよりはマシな気もしますが。

1期のレビューに書き損じたことも書きます。
1期のレビューとコメントにも散々書いてもまだ沢山あるってのは驚異的だし、全部書くわけでもないです。
末恐ろしい。

新世紀エヴァ(ヱヴァ)ンゲリオン
・禪院“真希”
見た目も音も漢字もエヴァンゲリオン新劇場版の“真希”波・マリ・イラストリアス
・究極メカ丸
見た目がまんまエヴァ。顔とか二号機の別バージョンで出てきそうなくらい。
コックピットの複数の+での空間表現とかも完全にエントリープラグ内。
・シン・陰流
庵野秀明が好きすぎてね。本家は掛詞的に意味を重ねてるものなんだけど、なんか意味あって「シン」を使ったんですか?
1期に描き損ねたこととしては、ノブナガの円とも酷似してます。

ワールドトリガー
・追尾弾(ビジョン)~五重奏(ヴィオラ)~は空閑遊真のトリガーだね。まんまです。
近い世代の漫画家から取り入れるのは流石に互いにやり取りしてるだろうけど、仲間意識から葦原先生に「やめて欲しい」って感情が生まれ得ないだろうってことに卑劣だなと思ってしまう。
まあさすがにポジティブに捉えてると思いますけど。

BLEACH
・1話の虎杖と伏黒は、一護とルキアに置き換えれる。
・領域展開は卍解だよね。領域と言っちゃってるから多様性は薄れてる。良いか悪いかは分からないけど。
・呪骸

NARUTO
・第七班と役割がかなり近い。女1人男2人男の指導役1人。女は強気。男はクールと元気で、クールな方はエリート、元気な方は体に凄いのを宿す。指導役は顔を隠してて強い。(まあ割と色んな作品で男女比に関しては見られるけども)

ハンター×ハンター
・呪術の説明に缶ジュースを使う。流石にこれを避けずにそのまま使ったのは引いた…。
・術式の開示はゲンスルー。
・ゴリラモードもキメラアント。
・東堂の手がなくても使えると見せかけてやっぱ使えませんでしたって展開、ネテロと本質的には全く同じことを言ってるし、ネテロは手がなくても使えたから、ネテロを連想させてその逆をついてて、結果的にHxHを利用してる。
タチが悪すぎる。

寄生獣
・体に宿った人外が、勝手に体を変形させたりする。寄生獣はその部位を丸々変形出来るという設定があるが、呪術はほっぺたに口ができるなど、構造がよく分からない点が劣っている。
・真人の足の変形、さながら後藤。
(寄生獣はあらゆる作品から取り入れまくってるから少しブレそうではあるけど一応記載。寄生獣は今までにないものに仕上がってると僕は思うし)

幽遊白書
・強さを級で表し、上限が決められていない感じは幽遊白書に近いな。上限が決められていないってのは設定と言うより当たり前だけども。さすがにこれは重箱の隅をつつくような指摘か?

ワンピース
・「死に時を選べるくらいには…」、「強くなきゃ死に方も選べねぇ…」の喩え、ドフィやローのセリフだね。
etc.....

列挙した上で伝えたいのは、すずめの戸締りにも感じたことだけど、なんの意味もないただ“好き”なだけのオマージュにはパクリかどうかの議論以前に価値のない場合がほとんどだということです。

最後の最後にもう1つ重要な問題点を。
それは、パクられた側が中々対応が難しい事です。
呪術廻戦に取り入れられて嬉しいと思う人もいれば、了承無しにやめて欲しいという人もいるでしょうし、実は裏でちゃんと了承をとってるのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
要するに、「取り入れられた側が結局何も言えない状況に陥りやすい」ことです。
「俺の方が漫画家として先輩だけど呪術の方が売れてるし、ここでオマージュしないでとか言ってそれが世間に伝わったら炎上するかも…」みたいな圧力もあるでしょう。
読者の罪も重いです。

最後の最後の最後にプチフォローすると、年齢を重ねた人ほど昔の漫画が恋しくなって、そうなった時に呪術廻戦ぐらい正面からパクってると嬉しくなる人はいてもおかしくないかなとは思います。
これは分かった上で喜んでるパターンなので正しい読み方だと思います。

これを持って呪術廻戦卒業します。
ありがとうございました。
早く完結して席を空けてください。


2023/05/13追記
少し“取り入れ”について追記します。

パクリかオマージュかの線引きとして一つ分かりやすいのは、本人が“バレたいと思ってるかどうか”だと思います。
もっと正確に言うと、バレたくないのがパクリ、バレたいのがその他で、その他の中にはオマージュ、ギャグ寄りならパロディ、尊敬の念が含まれるならリスペクトと言い表せるのかなと。

お笑いなどの文脈では“パクリ芸”なんてこともあるので、“バレたいと思ってるかどうか”が通用しない場合もあります。

結局、多少整理はできても、言葉を定義してそれを人類の共通認識にすることは出来ないので本質はそこではなく、その取り入れに意味があるのかどうかだと僕は思うことにします。
パクリ芸の場合も、ただのパクリでダサいっていう面白さになってて、それはつまり意味があるという事なので。

ただ真似るだけ、模倣するだけならそれは悪意の有無関わらず無意味。
呪術廻戦における取り入れに僕は意味を感じなくて面白いとも感じませんし、不愉快に感じました。
それを面白いと感じる人は享受すればいいし人それぞれだとも思います。

結論は同じで、
・原作者に創作者としての矜恃が感じられない
・原作者が生み出す作品内外全ての言葉に慮りを感じない
・取り入れの全てに意味を感じない

よって、僕は(これ大事)呪術廻戦の事が嫌い、です。

多分呪術廻戦の事が好きな人と僕は仲良くはなれないけど、僕のことなんか蚊帳の外で好きでいるべきだと思います。


※ずっと自分の中で取り入れの線引きや呪術廻戦に対する感想が定まらず、定期的に考えが変わったりしています。
言葉のニュアンスの話とかにもなってくるので仕方ないですが。
今後の人生で何回も考え直して、より良い考え方に近づけるように頑張ろうと思える、自分にとってある意味では大切な作品かもしれません。
時間が経ってこのレビューを見返した時に、「過去の自分は愚かだ」と思い直すのかも。
ぜにげば

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