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隔たる世界の2人のarchのレビュー・感想・評価

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)
4.2
ループ、同じ時間が死ぬことによって繰り返されるその映画的な現象は、現実で繰り返し行われる白人警官による黒人を対象とした殺害事件のメタファーとして機能する。

ただ歩いているだけで殺される、
部屋で寝ているだけなのに殺される。

それらの日常の他愛のない瞬間に起こる悲劇は
まるで"死に戻り"映画における強引な因果律のようであり、しかし紛れもなく米国に住む黒人に降り掛かっている現実なのだ。

この映画はそんなありえないようであり、そして何よりも辛辣な現実を見事にループものとして語ってみせている。これまでに見た中でこれ以上にテーマと死に戻り設定が噛み合っている作品もない。

本作のスタンスは強固であり、
"白人警官は殺人を楽しんでいる、そうとしか考えられない"というスタンスを取っている。
面白いのが二人が話し合うことで"分かり合えた"かのように一度描き、そしてひっくり返すことで白人警官を完全に人殺しに仕立てたことである。
「人同士だから分かり合えるはず」という安直な着地はせず、より切羽詰まった問題として映画という表現を以て、白人警官達に"銃口"を突きつけようとする姿勢がここにあり、黒人側に銃の存在をほのめかしながらも"使わない"という部分に強いメッセージを感じる。
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