半兵衛

シン・仮面ライダーの半兵衛のレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.5
監督がウルトラマンとともに好きであった仮面ライダーを、自分なりの流儀で原典へリスペクトしつつ作り上げたこれぞマニア(道楽主義者)でしかなし得ない仮面ライダーに。でも庵野秀明監督の趣味が出すぎてしまっているために、同じファンとしては誉めたいところとひいてしまった二つの部分が混在しておりこれは傑作なのか問題作なのか決めかねている自分がいるのも事実。

素晴らしいところは原作やテレビ版初期のムードを生かしながらも新たな仮面ライダー像を作り上げたことで、所々に原作のオマージュをばらまきつつ2023年のヒーローとして成立させている。またアニメなどで鍛え上げられた自身の秀でたセンスを生かした変態的ともいえるこだわった戦闘シーンも『シン・ウルトラマン』のノウハウがあったとはいえ前作とはまた違う等身大ヒーローの面白さを堪能できて楽しい。

一方で某綾波+ナデ○コの○○みたいな90年代のヒロイン像のルリ子や、必要なことを動作や表情の変化ではなく台詞で全部処理する演出、記号みたいな感情の浅い登場人物、平成仮面ライダーみたいな怪人の名前や設定などに「ウーン」と困惑したりもした。特にヒロインや女性の描きかたは『シン・ウルトラマン』もそうだったけど90年代チックでその懐かしい匂いにノックダウンしそうになったりも。

でもそんな問題点も後半の主人公たちの想いが交錯したドラマやアクションのテンションの高さで吹っ飛んでしまった、特に森山未來の熱演は素晴らしくて、得意のダンスを生かしたアクションや顔の表情を動かさず微妙な感情の変化を出す熟達した演技に『モテキ』の主人公がここまで来たのかと妙に感慨深くなる。正直言えば終盤は森山未來がいたから成立したとも言える。

原作漫画を読んでいればにやりとするラストも◎、そしてエンディングでの選曲のセンスが最高で今までの欠点がぶっ飛び良い作品を見たような清々しい気分になってしまった(でもそんな自分が少し恥ずかしかったりも)。

しかしオタク道を本作で極めてしまった庵野秀明は何処へ向かうのだろう、「帰ってくるライダー」の詞のように朝日とともに我々のもとに新作を引っ提げて帰還する日は来るのだろうか。
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