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シン・仮面ライダーのdemioのネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<好きだったところ>
・庵野秀明がずっと固執している「世界を良くしようという考えが急進的すぎるあまりハルマゲドン的全体主義に走る国家規模組織の枢軸」の思想について、エヴァのゼーレの解説入門まとめが急に出てきたぐらい、ショッカーを通じて分かりやすくえがかれていた。「人類の幸福実現」という要件をどう解釈するか。それは人類でもっとも絶望した人間を救うこと、すなわち「人類の不幸の最大値」に対処することであるとショッカー(を生み出した人工知能たち)は定義する。この「不幸の完全解決」型の組織が自らのコードに忠実に発展すると、不幸の原因を生み出し不幸を感じる個々の主体たちを、大いなる崇高な全体性へと溶融させ、一つにし、消し去っていく終末論的全体主義へいずれ帰結する(問題解決のために、問題を感じる当の主体たちを消滅させる)。それに対し、個人や主体(欲望や生命)がこの世界に「ある」というところから出発しないといけないと目覚めた主人公たちが立ち向かう、という構図は完璧にエヴァであり、かたや、正義と悪の格闘を、奥多摩のダム湖や、鹿島臨海工業地帯のような昭和の重工業インフラを象徴させる地で行わせるというのは、シンゴジラ・シンウルトラマン(高度経済成長期に抑圧された自然や土俗性が怪獣の形となって昭和のインフラ系地域に出現するという文明モチーフ)であり、直近2作のそれらと、エヴァ(全体主義・共産社会主義vs資本主義(それぞれ不合理な欲望を持つ個人を単位とする社会)というモダニティ像の闘争モチーフ)とが、急きょ合流し、鮮やかに整理されたように映った。

<嫌だったところ>
・アクションシーンの半分以上が暗い照明下で行われていて、動きや形が見えない中で闘われても、知らんがな…という気持ちに。
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