王冠と霜月いつか

シン・仮面ライダーの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

『辛い』という字に一本足せば『幸せ』
「幸せ」から一本引けば「辛い」

2023年3月29日追記
今日ふと思い付いたんですが
シン・ゴジラで、3回程、会話やメッセージとして
「好きにする」
というワードが出て来ますね。あれは、庵野秀明監督が、シン・仮面ライダーは俺の「好きにする(撮る)」というメッセージの様に思えて来ました。まず、東宝のシン・ゴジラをヒットさせれば、東映の重役も無条件でO.K.を出すだろう。シン・ゴジラをリアルで新鮮味のあるタッチで、それでも丁寧に一般受けする作品に仕上げる、そして…そんな意味に思えてなりません。考え過ぎでしょうが(笑)
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映画の楽しみの1つとして、先が分からないストーリーの展開で、初見の映像に魅せられる所が、たまらぬ高揚感を生むことになり、それが新しい作品を観たいという需要になりビジネスとして成り立っているのだと思います。勿論、原作がある作品を脚色して映画化した作品は過去に無数に存在しますが。
シン・ウルトラマンも、このシン・仮面ライダーも公式サイドが依頼している以上、脚色はあれど全く異なる結末は迎えられない訳です。つまり大筋は最初から分かっている作品を如何に庵野秀明というアーティストが再構成するかと見届けに行く映画な訳です。

私は
テレビシリーズの仮面ライダーは未見。ちゃんと全話観たのは、柄本佑さんも好きだという、オダギリジョーさん主演の仮面ライダークウガだけ。
石ノ森章太郎先生の原作漫画は少しだけ既読。
メディアミックス展開としてのマガジンでの「真の安らぎはこの世になく」は未読で今作品に挑んでおります。粗筋などを綴ってもあまり意味がないかと思いますので、感想だけ簡潔にだらだらと(笑)

①第一幕、発端、状況設定ですが…オープニングはスムーズで無理がなく、PG-12だけあって、ショッカーの隊員を倒す際に吹き出す血、ライダーが浴びる返り血に期待値が高まります。掴みは◎でした。
昭和ライダーの「改造人間」というワードはそこにはなく、オーグメント…昆虫などの能力を人間とハイブリッドさせた、人外合成型オーグメント…プラーナという謎物質を制御するという技術で途轍もないパワーを生み出す、若干初耳ワードに置いてけぼりを喰らいつつ、バッタオーグメントに改造されてしまった本郷猛が緑川博士の遺言の元、戦いに身を投じるという物語。そこには、正義や悪という概念より、各々の考える幸せになる為という辺りが現代的だと感じました。プーチンだって自分が正義だと思ってウクライナに侵攻してる訳ですしね。金正恩からしてみたら、米も日本も韓国も悪の枢軸国なのでしょう(笑)…世界征服を企む悪の組織なんてものは、何処にも存在しないのですね。

②第二幕、中盤、葛藤…
政府関係者として、竹野内豊さんと斎藤工さんが登場する所で思わず吹き出してしまいました。竹野内さんは、今回は赤坂さんではありませんでしたね。立花と滝と名乗ってました。その二人の名前位はテレビシリーズのレギュラーキャラクター由来なのだとわかります。他にも数々のオマージュがあったのだと思いますが、1つだけ分かったのは、柄本佑さん演ずる一文字隼人/バッタオーグ2号との戦いで、脚部が折れて動けない本郷猛のシーンですね。テレビシリーズで撮影中のバイク事故で大腿部を複雑骨折してしまった本郷猛/藤岡弘さんを表しているんですね。それがきっかけで、代役の佐々木剛さんが仮面ライダー2号となり、バイクの免許を持ってなかった佐々木さんの為に新たに変身ポーズが設定され(1号はバイクに乗り腰の変身ベルト・タイフーンに風を受けると変身可能:テレビ版設定)、それが子供たちに大ウケして視聴率が跳ね上がり、特撮変身ヒーロー番組として市民権を得て、仮面ライダーのシリーズ化も確定させ、現在に至ると、文字通り「怪我の功名」…奇蹟の連続の嘘のような本当の話です。
 さて中盤ですが、仮面ライダーやサイクロン号の造形の格好良さに慣れ始めると、世界観の表現というかカット、シーン、シークエンス、ストーリーの進行にやや違和感を覚えはじめます。私は、これは庵野秀明監督があえて行っている演出なのだと思いました。画作りのプランが先に有って、それに合うイメージの俳優達をキャスティングして台詞を廻させる。一文字隼人/柄本佑さんのキャラクターの良さは庵野秀明監督の想定外だったのかも知れません。逆に、池松壮亮さん演ずる1号の押さえた演技が、キャラクターの心のアクションを少し伝わりづらくしてしまっているかも知れないと思います。池松壮亮さんに熱血漢を演じられても困惑するだけだけれど。

③第三幕、結末、解決…
ルリ子の命を賭した2号の洗脳解除と用意周到さで、当時の庵野秀明少年が狂喜乱舞したであろうダブルライダーが誕生し、ヘルメット内への魂の固着=最後の切り札が設定され、最終決戦へ。
3号以降のバッタオーグメント軍団との戦いは💮、蝶オーグメント=仮面ライダー0号との戦いは、復讐でも弔い合戦でもない、やや難解な、まるで仏教的な「解脱」的な結末を迎えます。…ハビタット世界ですか…どちらが良かったんでしょう?人類にとっては。
 そして本郷猛の魂もヘルメットに固着され、一文字隼人が継承し物語は幕を閉じます。

バイクは孤独を楽しめるのが良いところですが、一文字隼人は本郷猛と共に新型サイクロン号で走り出します。

あのエンディングで走行していた橋は山口県下関市角島大橋で、庵野秀明監督の故郷の近くにある絶景コースの様ですね。私もプライベートではライダーなので、いつの日か彼処を走ってみたいと思います。赤いマフラーを巻いて。

スコアは、3.9。賛否両論と誰もが言ってますが、何処にもアンチは存在するので当たり前です。

因みに、本日、地元の映画館に、浜辺美波さんが舞台挨拶にいらっしゃるそうで。
一生の不覚(笑)