Kenji

シン・仮面ライダーのKenjiのネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

謎の集団に追われていた緑川ルリ子と本郷猛、蜘蛛の姿をした怪人に捕らえられるも本郷の変身により退け窮地を脱することになる。
しかし本郷は、自身が人よりも凄い力を手にしたことと殺しをしたことに驚愕し苦悩することになる…。

本作は、庵野秀明監督による令和に蘇った第一作目の仮面ライダーのリメイクにして原点回帰となる作品。
仮面ライダー1号のトレンチコートを来た感じも渋格好良くてビジュアル面や冒頭のショッカー下級構成員らを倒すでなく、潰していく流血がシーンが出てくる暴力描写も挑戦的でした。
その呪いのような力に苦悩する所も初めにちゃんと描いていたのも良かったと思いました。
バイクヘルメットからライダーの仮面へと変形するシーンも男の子心くすぐりました。



対決するSHOCKERは、絶望を抱いた人々を救済する組織として描いてますが己の力を快楽のために使うクモオーグやカマキリ・カメレオンオーグ。
疫病による人類淘汰を目的とするコウモリオーグ。
無力な人々を洗脳し支配するハチオーグ。
そして人間たちの魂を多幸感ある世界に送り理想郷を作り上げそうとするチョウオーグと己の目的のために力を使う人たちで構成される感じになっていて現代に沿ったテーマにもなっていました。
そして運営するのが、創始者が作り上げたAIことアイにより運営されるだけではっきりとした総統と銘打ったトップが居ない組織となっていました。
サソリオーグを演じたのが長澤まさみさんなのに驚きましたが、完全にネタキャラとして扱われてました。

シン・シリーズ特有の初見では処理できない情報量などを台詞で説明する所や“プラーナ”、“オーグメント”と作中特有の用語も多くありました。
そして緑川ルリ子も庵野作品のヒロインの要素を兼ね合わせたヒロイン像で本郷猛も今に合わせたヒーロー像と柄本佑さん演じる仮面ライダー2号の陽気さ振りが際立っていました。
そして相変わらずさらっと登場している協力者の政府の人間に、竹野内豊や『シン・ウルトラマン』で主演だった斎藤工もユニバースの繋がりを仄めかす感じでした。

クモオーグとの対決シーンも昔のアクションシーンの再現や効果音の拘り、偽ライダー軍団の登場と個々の要素が良いだけにアクション時でのカットの多さやCGの粗さが目立っていました。
敵幹部たちの人間模様も観てみたかったのですがそこは、前日譚コミカライズ版の『真の安らぎはこの世になく』で補完するしかありませんでした。
庵野監督の愛と熱量を感じる作品ですが、本編が追いついてない感じに思ってしまいました。

しかし変えてはならない者、変わっても変わらない者本当の幸せについても謳った普遍的なテーマで孤高のヒーロー像について描いていたのもヒロイズム要素を感じました。

最終的にチュウオーグこと緑川イチロー/仮面ライダー0号に1号と亡くなった緑川ルリ子によって洗脳が解けた2号ともに立ち向かい。
本郷が決死の覚悟で自らを犠牲にし命の源であるプラーナを使い果たし、0号とともに消滅し残ったヘルメットを2号に継承しショッカーに立ち向かうラストで終わりました。

2号のカラーリングが、お馴染みの爽やかな色合いになっていました。
一人でなく本郷猛や緑川ルリ子の魂とともに歩むラストは、寂しくもいいラストだったと思います。
0号のカラーリングやデザインもこれまでにない蝶🦋が、モチーフで潔白な白を基調のデザインなのも良かった。

男の子心くすぐる場面や効果音に拘り、石ノ森章太郎先生らしい変化による恐怖や力を持ってしまったことへの葛藤を描いていました。
しかしCGや個々の部分で、人を分けてしまう難しい作品だとも思いました。

追伸
シン・仮面ライダーのSHOCKER一味サイドの物語を描いたコミカライズ『真の安らぎはこの世になく』で、緑川イチローやその他の怪人たちに感情移入しやすくなるのでオススメです。
Kenji

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