tanaka

シン・仮面ライダーのtanakaのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
4.0
本作を見て、ちょっと色々と思う事があったので章立てにして記したいと思います。私のスコアは、仮面ライダー50周年記念作品としての評価であり、そうした基準で見ると成功だったと思っています。

1.良かった点
2.いまひとつな点
3.ネガキャンが多い原因の考察(妄想)
4.まとめ

1.良かった点
1-1.仮面ライダーの変身、バイクの変形
これ冒頭30分までなら100万点でしょ!!そう叫びたくなる位に、仮面ライダーの初変身とサイクロン号の変形シークエンスは最高の出来です。追告で見せるのは勿体ない位の白眉のシーンで、BGMの盛り上げも最高。ここは元祖仮面ライダーでもお馴染みのシーンで、ルリ子をさらった蜘蛛男を追ってバイクにまたがり仮面ライダーに変身するシーンがありますが、変身過程が描かれず、いつの間にか仮面ライダーになってるんです。仮面ライダーはどんな風に形態変化するんだろうと、庵野さん自身も含めた当時の子ども達が持った疑問。それに対するアンサーが、あの変身シーンなのでしょう。最高でした。

1-2.原点回帰
変身時には顔に醜い傷が現れたり、昆虫の特性が体に表れたりする等、原作踏襲してる点も良かったです。特に傷が浮き上がった本郷の顔は、仮面ライダー真を彷彿とさせていて、真・シンシリーズのコラボのようで、楽しませてくれた点でした。そうした傷を隠しながら、そして自身の存在そのものに苦悩しながら仮面を着けて戦う様は、正しく仮面ライダーでありました。

1-3.俳優陣の演技
また、俳優陣も良いお芝居でした。地味だ何だと書き連ねているネット記事を見かけましたが、昭和ライダーの雰囲気を現代風に再現できていて良かったです。池松壮亮の純朴さと、庵野構文の台詞回しは古臭さや恥ずかしさを感じさせましたが、池松壮亮の見た目の御陰で違和感の無い演技でした。柄本佑も同様に、昭和の雰囲気を醸し出しながらも、頼りになる飄々とした熱いキャラクターで格好良かったです。浜辺美波も当初はクールながらも、ショッカーからの逃亡生活の中で急速に人間らしくなりながら、自身の急激な変化に戸惑う様が可愛らしかったです。

2.いまひとつな点
2-1.戦闘シーンがほぼCG
蜘蛛オーグとの戦闘は最高でした。バッタの跳躍力と蜘蛛の多足を用いた戦闘は、異能同士の戦いという事をしっかり印象付けられていて良かったです。ただ、それ以降の戦闘シーンが殆どCG、しかも、やりたい事とやれてる事のギャップが埋められてなくて、どこかギャグっぽくなってしまっていて。作り手の皆様の頑張りは凄く伝わってくるんですが。特にショッカーライダーとの戦いは、恐らくCGの粗を隠すため、敢えて画面を暗いトーンにしてると思うんですが、そのせいで何が何だか分からなくて。ショッカーライダーの素顔の強烈さもよく分からなくて、ここは本当に勿体なかったです。

戦闘シーンについては、CG頼みではなくカッコいいスタントアクションにシフトすべきだったのではと思いました。蜘蛛オーグとの戦いでは、バッタらしい跳躍を多用していたのが、バッタ怪人の特殊能力感ありましたし、折角戦闘員に対する暴力描写も描いて怪力の強烈さを印象付けたのだから、スタントアクションの比率を多めにすれば良かったと感じました。

2-2.エヴァンゲリオンから脱却できていない
映画を観た人なら誰しもが思った事でしょう。幸福になるために人類を魂の世界に送って1つにする(≒人類補完計画)というのは、最早使い古されて陳腐化してしまっているんです。ショッカーは既に政治の中枢に食い込んでいて、動かせる部隊も僅かという不利な状況下でショッカーとゲリラ戦をやっていくとか個人的に燃えるのに、エヴァンゲリオンに引っ張られたせいで‥。ここはとても残念な点でした。

3.ネガキャンが多い原因の考察(※妄想)
1番の理由は、売り出し方が不味かったと思います。本作は仮面ライダー生誕50周年記念を祝うファンムービーな訳で、そんな映画を万人受けするエンタメとして宣伝したのが、そもそも間違いだったと思います。そもそも仮面ライダーのファン層なんて、マーケット全体から見れば僅かな割合しかいないと思うのです。スポンサーは庵野さんを起用する事で、この課題をクリアして、シン・ゴジラやシン・エヴァンゲリオンのような大ヒットを目論んだのでしょうが、やはり難しかった。災害としてのゴジラに対して、核を3度落とさせまいと日本の官僚達が立ち向かう政治ドラマとしてのシン・ゴジラ。誰しもが必ず見たことはある、最早通過儀礼と化したエヴァンゲリオンの完結作であるシン・エヴァンゲリオン。いずれも、エンタメとして楽しめる潜在顧客が多かった。これに対して、シン・仮面ライダーは前2作程に多くの人達を楽しませられる要素が、元々少なかったと思うのです。この問題はシン・ウルトラマンにも当てはまると思っていますが、ウルトラマはシン・ゴジラの成功のお陰で客足が稼げていたため、問題が顕在化しなかったのだと思います。まとめると、仮面ライダーという題材に、必要以上の期待を皆が寄せてしまっていたのが、ネガキャンが多い大きな原因であり、この映画が駄作なんて事はありません。寧ろ、仮面ライダー映画として、初めて興行収入20億を超えたのですから、ちゃんと結果は出せています。

4.まとめ
「変わるモノ、変わらないモノ、そしえ変えたくないモノ」という本作のキャッチコピー。変えたくないモノに、スタントアクションを含めて欲しかったと強く感じます。ショッカーライダーとのバイクアクションは、是非ともスタントで観たかったと思います。そこさえクリアできていれば、本作は誰しもが認める傑作になり得たと思います。
tanaka

tanaka