不思議な女性だ。決して美人とは思わないのに、何故か惹きつけられてしまう。ゴダールの術中にハマったのか。彼女の魅力を知り尽くしている監督のなせる技か。
ショートボブのアンナ・カリーナ
作曲家ミシェル・ルクランが用意したのは主題と11の変奏曲、しかし使用したのは1曲のみ。その曲が繰り返し流れる。これがすごくいい。
#1938 2023年 468本目
1962年 フランス🇫🇷映画
監督: ジャン=リュック・ゴダール
音楽: ミシェル・ルグラン
映画脚本: ジャン=リュック・ゴダール、 Marcel Sacotte
12の断章で描く女性ナナ(アンナ・カリーナ)の生き様。
最初の断章。パリのとあるカフェ。後ろ姿の男女がカウンターに座っている。ずっと後ろ姿のままの二人。人生を語り合った末に別れることになったナナと夫だ。
ナナは、女優志望だったが、家賃も払えないほどの生活に陥ってしまい、やむなく街で男を誘い売春するようになる。
やがてナナは、見知らぬ男と関係を持つことに無感覚になっていく。破滅への道を歩み始める。
淡々と見せながら、それがやたらと味わい深いカットの連続。突然『裁かるゝジャンヌ』が画面いっぱいに音もなく流れる。家賃滞納で鍵を取り上げられた直後のシーン。自分自身人生の苦しみに耐えて涙を流すナナは、この時ジャンヌ・ダルクに準えている。準えているのは自分か、監督か。
そして娼婦へ足を踏み込むことになるが、
次第にこの涙は消えてしまう。
恋した直後のあまりに呆気ない最後が逆に余韻を残す。