コマミー

東京自転車節のコマミーのレビュー・感想・評価

東京自転車節(2021年製作の映画)
4.1
【焼け野原を、漕いで抗う】



これはお世辞抜きで、私の中で一番好きな"社会派ドキュメンタリー"になった。

こんな体当たりなドキュメンタリーは他に観たことない。まさにコロナ禍が生んだ最高の"問題定義作"。

故郷の山梨から東京に"ウーバー配達員"で出稼ぎに出かけ、現実を突きつけられ、経験してより"世間に疑問を抱く"。だが同時に、この世を生き抜く"テクニック"もマスターし始める。時には失敗もするが……。
まるで"一本のドラマ"を観ているような感覚も持ち始めて、とても観ていてハマった。
そして監督の周りを取り囲む知人達の優しさに感動の嵐。監督の前作の主人公"ひいくん"も映っていたのだが、彼もほんと優しさの塊で朗らかな気持ちになる。彼を射止めた監督も流石だし、監督自身も優しいからほんと好き。だからこそ、この世の中は彼にとことん"ダメージ"を与え続ける。
ウーバー配達員だからこそ付いて回る"ハプニング"もとても痛いものだった。だがその代わりに監督が"野獣にじわじわと変わる瞬間"があり、90年代の超大作アクション映画のクライマックス並みに興奮してしまった。

まだまだ語りたい事がいっぱいあるのだが、まだ上映館があるし、これから鑑賞する方もいるのでやめとこう。とにかくこの現実をしっかり皆さんにも観てもらいたい。

「コロナ禍の東京」と言う"焼け野原"を駆け回る彼の姿を、是非目に焼き付けてもらいたい。
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