Nori

Blue Island 憂鬱之島のNoriのレビュー・感想・評価

Blue Island 憂鬱之島(2022年製作の映画)
3.0
香港。2022.08の現時点で、香港の現状に関心を抱いている日本の民はどれほどいるのだろうか?
ウクライナやミャンマーのことですら、もう既に忘却曲線上、下に向かって落ちていっているだけ、と感じるのは私だけだろうか?

文化大革命、六七暴動(正直詳しくは知らなかった)、天安門事件、雨傘運動。支配するモノ、自由を脅かすモノに対して、抵抗を示すのは、どの時代も変わらない。そして、多くの場合、デモでは何も変わらないことが圧倒的に多い。政権側の都合、その内部からの変容により、時代は動くのだ、というのが近年の在り方なのかな、という気がしている。

香港が自由を取り戻す、市民の手に自由が返ってくることは、残念ながら長期に亘ってないだろう。
中国共産党は圧倒的に強大で、妥協する理由も、その余地もない。彼らに迎合するか、黙って去るかの二択が、香港人の現実的な生きる道だ。日本で注目された周庭さんが今日まで沈黙していることが、それを象徴している。
その選択を誰も責めることはできない。人は誰も自分が可愛いし、臆病で。生きていてこそ、その先に希望を見出せるのだから。

返還前の香港に赴いてから、数年前、久々に一国二制度下の彼の地を訪ねた。以前は北京語が使える場面は限られていたが、多くの場所で通じるようになっていた。本土のプレゼンスを強く感じると共に、こうやって文化的にも飲み込まれていくのだな、と哀切をもってたたずんだことを覚えている。

本土から自由を求めて香港に渡った人々にとって、今の現状は苦々しいものだろう。色々呑み込んで、海を泳ぐ1人の男の姿(予告編にもある)。その背中が物語るモノを、ひしひしと噛み締めている。
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