真一

ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言の真一のレビュー・感想・評価

4.1
 ユダヤ人強制収容所に関わったナチス党員、看守、近隣住民の証言から浮かび上がる「凡庸な悪」。おぞましいが、僕らの心の中にも巣食っている事実を認めざるを得ない。

「99人が虐殺命令に従うなら、私もそうするよ。逆らえば自分が危ないだろう」

「ユダヤ人虐殺はひどい。でも、私はただの看守だった。責任とか言われても困る」

「ヒトラーが悪いとか、誰が悪いとか言えないよ。 そういう時代だったんだ」

「われわれドイツ人は勤勉で几帳面だ。なぜ過去を恥じる必要があるのか」

 証言に出てくるユダヤ人虐殺を「関東大震災の朝鮮人虐殺」に、ヒトラーを「昭和天皇」、ドイツ人を「日本人」に置き換えれば、そのまま日本人の発言だ。

 結局、インタビュアーの「加害責任を感じるか」との質問に「感じる」と答えたのは、たった一人だった。残りの人は「どうすることもできなかった」「自分は悪くない」を連発。こうした傍観主義が生み出す「凡庸な悪」が、歴史を歪め、ファシズムの再来に道を開くような気がしてならない。

 「ゲッペルスの秘書」の姉妹作と言えるような作品だった。淡々と証言を伝える内容であるだけに、かえって言葉の迫力を感じる。見ておいて良かった。
真一

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