かげぐち

こちらあみ子のかげぐちのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.9
もしも自分が映画監督になれたら撮りたかったのが今村夏子の「こちらあみ子」。
そもそも映画ばえしそうなエピソードばかりではある。
のりくんに殴られる名シーンどうなるかと思ったけどあれが限界かね。
原作では、自意識と認知がふわっとしている人間(?)の一人称視点で描かれる景色や人の営みの様相が面白かったのだけれどこういった視点の意識は映画ではあんまり再現できていなかったような。難しいよね〜!

映画版では、動物的視点しかもたないATフィールド全開!なあみ子が、少しずつ自己と他者を認識していっているような様が描かれており、
残酷さがマイルドになっていて救いがあった。
心を通わせられないため、本人に悪意がなくともほとんどの人に見捨てられる中、他者が発する微かな優しさと関心をくみとっていくあみこの生命力みたいなものがラストのオリジナルの台詞に繋がっているのか。

「怖い、怖い、兄ちゃん!!!」では、やはり泣く。これほど泣けるフィクションのセリフはそうそうないよ〜〜

監督の「こちらあみこ」のとらえかたが自分と似ていたのでとても満足。
今村夏子はちょっと残酷すぎるのよ。

エンドロールの監督の名前の横っちょにトランシーバーの片割れのイラストがあってその場ではウワェとなってしまった。でもしばらく経ってから、きっと良い人たちが撮ってくれたんだろうなーとしんみりしました。