そーる

スティルウォーターのそーるのネタバレレビュー・内容・結末

スティルウォーター(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

Twitterで話題になって知った作品。
アマプラに落ちてたので鑑賞しました。

結論傑作でした、、、

オクラホマ、スティルウォーターに住む保守的な父親(マット・デイモン)が留学先(フランス、マルセイユ)で逮捕された娘の無実を晴らすために1人フランスで事件を追う話。

鑑賞前はかなり軽微な見やすい作品なのかなと思っていましたが軽率でした、、、
これは重厚な人間ドラマです。

主人公は過去に逮捕歴があったり、酒やドラッグのせいで問題を起こし、家族と向き合ってこなかった過去があります。
妻は自殺、娘はそんな家族から遠く離れるためにマルセイユへ留学しました。

そんな中、パートナーを殺害した罪で逮捕された娘。それから5年の月日が経ちます。

いろいろあり、娘の無実を晴らすために1人慣れない土地で働き事件を調べるわけですが、
ここで1人の女性とその娘、マヤと出逢います。

ここが本当に作品の構成が上手い、、
明らかこの女性とマヤは、
主人公がスティルウォーターで築けなかった、尽くせなかった理想の家族のメタファーです。
過去から更生した主人公は不器用ながらも誠心誠意愛を注ぎます。
サミースミスの曲が効いてきますよね、、

次第にかけがえのない存在になり、本当の家族になった矢先、
実は無実だと信じていた娘が殺人教唆の可能性があることが判明。
その経緯が原因で、最愛の娘である(になった)マヤに嘘をつかせてしまったこと、危険に晒したことなどから
家を追い出されます。

娘が釈放されアメリカへと帰郷。
娘の涙ながらの告白があります。
「ごめんなさい。なぜ私たちはこうなんだろう、、」と。

その後、2人はこのスティルウォーターの街を眺めながら語ります。
ここが本作1番の見せ場です。
娘は、「何も変わらないわねこの街は。そう思わない?」と言いますが
主人公は全く同調しません。
「いいや、何もかも違って見えるよ。」と。


家族から離れ新しい何かを求め留学した娘と、
家族という過去を取り戻すために渡仏した父。
皮肉にも、父の方が得たものがあったようなそんな描き方が秀逸でした。

面会の時からずっと娘に同調していた父。
信頼できないと言われても、罵声を浴びせられても娘のために何も言わず動いていた父。
ボコボコにされた後の面会で娘から罵声を浴びせられるシーンは不憫で見てられません、、
『そんな悪い父親じゃないよ、、??』と言いたくなります。笑

しかし彼女なりの過去があるのでしょう。
父がマヤとその母親を通じて変わっていくことを
怖がっていたように感じます。
それを証拠に、
マヤの母親とタバコを吸いながら語るシーンでは
「彼はクズよ。だって私もそう(カエルの子はカエル)だから。」と。
そして最後の最後まで、上述した
「なぜ"私たち"はこうなんだろう」と言うように、
変わってしまった父を認めたくない、
クズなままの父なんだから自分もクズだ、という願望が見えます。
(本当は違うとわかっているのに)
その時には、主人公も「そうだな、、」と抱きしめます。
しかしここに涙はありません。

マヤと別れる時にはあんなにも涙していたのに、、、

そうして最後のシーン。
「いいや、何もかも違って見える」です。

本作は娘が犯した事件をきっかけに、
主人公の心の中の変化を描く作品、、
とても重い、、、、

救いようのない結果。
でも彼自身の心はきっと前よりもいい方向へ向かった。
いい方向へ向かったからこそ、辛い。

そんな作品で、これは是非とも語りたくなるような、後味のある作品だと思いました。
そーる

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