きゅうげん

フォーエバー・パージのきゅうげんのレビュー・感想・評価

フォーエバー・パージ(2021年製作の映画)
3.9
NFFAの復権、パージの再開。
そして合衆国は修羅の国へ……。
パージで繰り広げられる犯罪は大抵ヘイトクライムなので、そりゃまあ確かにブザーが鳴って「ハイおしまい」とはならないよね。

そんな黙示録USAにあって、キャラクターの吐露するセリフはどれも示唆的です。
アデラの「アメリカはメキシコであり、アフリカであり、イタリアである」というアフォリズムは的を射ていますし、ウィル・パットン演じる牧場主の指摘する「白人貧困層がポピュリズム的感化によって、既得権益である富裕層を内面化する自己矛盾」は鋭く的確。
また、「人種に上下はないけど、やっぱりお互いノータッチの方が平和」と消極的なディランに対し、フアンが「そうかも知れないけど、今は一緒にいるんだから」と相互理解を諭すシーンも印象的で、ええかっこしいのお坊ちゃんディランとセンスあふれる新人フアンの関係性の機微が、そのまま本作のテーマとして活きています。

これまで以上に前景化されたメッセージもさることながら、やっぱ映画としてどんどんレベルアップしてるのも嬉しいポイント。
とくに今回はアクションが高クオリティ。エルパソ市街戦でのセット長回し敵中突破は、圧巻の一言。おもしろバイオレンスは鳴りを潜めましたが、シビアな題材にマッチした重厚で観応えあるバトルばかりでした。
しかしこのあとのアメリカは、『デス・ストランディング』になるのか『日本沈没』になるのか……。
最終作にして最高傑作のパージです!