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前科者のspoonのネタバレレビュー・内容・結末

前科者(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ドラマも本当に最高だったが、映画版は佳代が保護司になった経緯が、刑事になった初恋の真司(磯村勇斗)に出会ったきっかけにより、明らかになっていく。丁寧に描かれていて、過去と現在の交差した描写が美しかった。

真司と再開した後、佳代の家で昔の気持ちが再沸し致すシーン。途中でふとスイッチが切り替わり、最後までせずに帰ってしまう。もう過去には戻れないのか。

真司が中原中也詩集に書いた「殺す殺す」などの殴り書きの文字を、佳代が消しゴムで消し、図書室にそっと戻すシーン。
加害者の更生を願う佳代が、同時に被害者である真司の怒りやその原因となった過去を消してあげたいという気持ち表れだったのだろうか。

不穏な遠雷と耳鳴り。音も効果的だった。
小さい画面で視聴していたのもあり、工藤誠が森田剛だと後半の方になってやっと気づいた。それくらい役に溶け込んでいて、森田剛さんの演技、素晴らしかった。

被害者と加害者、過去と未来、背徳感や罪悪感、怒りと希望など対比や交差する感情、背景描写が絶妙に上手く、
法でも福祉でも救えない人に寄り添い更生に導くという、社会性テーマもあり、素晴らしい作品でした。

ドラマも映画も、サスペンス×ミステリー×ヒューマンドラマがいずれも高い完成度で“全部入り”しています。

ー最後に、心に残ったセリフをー

斉藤みどり(石橋静河)が佳代に言った言葉ー「弱いからいいんだ。佳代ちゃんの弱さは武器だから。ダメダメだから安心できる。
前科者に必要なのは保護司じゃない。佳代ちゃん、あんたみたいな人間だよ」。

佳代が工藤(森田剛)を抱きしめながら放った言葉ー「もう加害者を産んではいけないの。もう被害者を産んではいけないの。もう終わりにして」。
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