akrutm

11時10分前のakrutmのレビュー・感想・評価

11時10分前(2009年製作の映画)
4.0
老朽化に伴うアパートの取り壊し計画に反対しながら大量のコレクションとともに暮らす老人コレクターの行く末を描いた、ペリン・エスマー監督のドラマ映画。

ドキュメンタリー映画『The Collector』で自らのコレクター生活を披露したペリン・エスマー監督のおじであるミドハト・エスマーが自身をモデルにした主人公を演じているが、本映画自体はフィクションである。ミドハトおじいちゃんは『The Collector』のときよりも歳を取っているが、まだ矍鑠としていて、なかなか味のある演技をしている。本映画でおじいちゃんが住む部屋のほうが、自分の実際の部屋よりも片付いているのがどこか面白い。オープンリールで音楽を聞くなんていう粋なシーンも出てくる。

映画の前半は、イスタンブールの商店街でコレクションを求めて彷徨ったり、馴染みの店でおしゃべりをしたりと、ドキュメンタリーのときと同様のコレクターの姿が描かれる。後半になると、アパートの立ち退きには一切応じない頑固な姿を見せるとともに、地下室の部屋をコレクションの置き場に提供させたりコレクションの整理に忙しくてお使いを頼んだりと信頼している管理人が取る行動によって、コレクターとそうでない人のモノに対する意識の違いが上手く表現されている。それだけにラストシーンのおじいちゃんの後ろ姿がもの悲しいが、ミドハトおじいちゃんが愛おしくなる映画である。

なお、作中でコレクションのひとつである昔に録音した音声をおじいちゃんが聞いているシーンがある。おじいちゃんが女性からインタビューされているような音声であるが、『The Collector』を撮影するにあたってペリン・エスマー監督が実際にインタビューしたときの音声なのかもしれない。
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