りょすけ

ディア・エヴァン・ハンセンのりょすけのレビュー・感想・評価

3.2
主人公の成長が感じられない。「ウソ」をついた世界線の自分から「真実」の自分に戻っただけであり、「ウソ」の自分で得たものは「ウソ」の開放と同時に消滅している。その消滅の経験を通じて何か本質的な気づきにたどり着ければ、一連の流れに価値を見出すことはできると思うが、特にその価値を感じることができなかった。映画のスタート地点に戻っただけ。

「悩んでいる人がいたら伝えてほしい、1人じゃないということを」このメッセージも好きではない。伝える側の視点に立てば、いいことをした自分に対する自己肯定感、満足感が多少あがるだけで、いわゆる無責任な偽善者の立ち位置に感じる。悩んでいる人の視点に立つと、自分の知らないところで自分のような「悩んでいる人」がいると気づくことができたからといって、自分の悩みが解消されるわけではないし、自分の近くに見方が現れるわけでもない。身近な人で同じ悩みを抱えている人がいるのならば「仲間意識」ゆえの救いがあるかも知れないが、そうでないのなら話は別。

「1人じゃないことを伝えればok!」みたいな軽い印象しかうけない。この映画の伝えるべきメッセージを感じ取ることができなかった。

ただまあ、主人公のように「その場の雰囲気でつい」「相手を悲しませたくないなと感じてつい」みたいなウソは実際に共感できる部分はあるし、その流れのままずるずるとウソを明かせない自体に発展していく流れも理解できる。その点で言えば、主人公のあのときついた「ウソ」は仕方ないものであり、その後の流れも避けられないものだったかもしれないと感じる面もある。
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