このレビューはネタバレを含みます
007を真面目に観る・語る人には、まず真っ先にハズされるわよね。
でもね。
みんなも初体験いろいろとあったと思うけど、アタシはこれが初体験だったわ。
素人目にも「お前、真面目にアクションやってねえだろ」ってわかるおちょくりぶりが最高!007っておちゃらけがないと退屈しちゃう〜。
その点、この映画は最初のアルペンから、エッフェル塔のダイビング、車が4分の1になっても走り続け、ムカつく奴は気球の床を空けて突き落とす。退屈さとは全く無縁のバカバカしさ。
しかも、007のどの作品よりも、出演者がムダに豪華なのがたまらない。
ブロンドと厚化粧、ハスキーヴォイスにデカパイで演技力ゼロのタニヤ・ロバーツは、あまりにもボンドガールらし過ぎるし、絵に書いたような単純な悪役をサラッと楽しく演じるクリストファー・ウォーケンには清々しささえ感じるわ。
そして、なんといっても、まともな人なら絶対にお目にかかれないアングラ世界の女王、なのか王様なのか、性を見極めることすら憚れるグレース・ジョーンズが、昼間から堂々と拝める贅沢さ!
ロジャー・ムーアは、こうした曲者たちを相手にしても、アクションも絡みも適当なんだけど、全く存在感が褪せることなく相手を引き立てながら嬉々と立ち回ってるのが印象的。
ちなみに、チラッと顔出し悪役の中には、ドルフ・ラングレンやアリソン・ドゥーディ(インディ・ジョーンズ 最後の聖戦)もいたりして、「これ、必要なの?」と思わせるバブル建築さながらのムダな贅沢さたっぷり。
主題歌は、バブル真っ盛りの80年代に大ヒットを連発した暑苦しい俺様バンドのデュラン・デュラン。
冷戦なんてもう古い。戦う相手はシリコンバレーだなんて、意外と時代を先取りしてたわね。
何事もマジすぎちゃダメよね。この路線なら、アタシ、次のボンドはルパート・エヴェレットかと思ったもの。
二度とは訪れないバブル期を、007も時代とともに軽やかに駆け抜けたんだと、見るたびに実感。