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パンケーキを毒見するのsomaddesignのレビュー・感想・評価

パンケーキを毒見する(2021年製作の映画)
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シニカル・毒舌・辛口を自称するタイプとは距離を置きたい

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トランプ政権や「バイス」といった政治をシニカルに描いた作品って、所詮よその国のことだからエンタメとして楽しめてたんだと気づかされる。我がことだと笑うに笑えない。昨年観た「はりぼて」が邦画では珍しい政治ドキュメンタリーで、異色の面白さだったので今作も期待して見にいった。


笑うに笑えないのは出来事のせいなのか、映画の出来のせいなのか。
宣伝文句の「シニカルな視点で“ニッポンの本当の姿”を映しだす、かつてない政治バラエティ映画が誕生!!」シニカルや毒舌を自称することほどサムイことはない。キャッチコピーとしては逆効果なんじゃ?
モンティ・パイソンやサウスパークな風刺劇なんだけど、「自称・毒舌家、単に性格悪いだけ」って持論が邪魔して、素直に受け止められない自分がいた。

そもそも今の現状って何をしても変わらない無力感や、冷笑的に事象を突き放して笑うしかない諦観が、結果的に政治の放置を招いた気がしてる。当事者意識を持つには生活から遠いものになっちゃった感。

冒頭で語られる「みんなが政治にうんざりして興味を失い、投票率が下がれば下がるほど政権与党には都合がいい」。薄々感じてたことだけど、キッパリ言われると身も蓋もない。
政治そのものより大手マスコミの信用されなさっぷりのが気がかりで、若い人のみならず基本8割引くらいで受け取るのが嗜みになりつつある気分。頼れるのが週刊誌と赤旗くらい……ってどんなディストピアだよ。

「こんな人たちに負けるわけにはいかないんです」発言もイラっとくるけど、それを批判する同じ口で物言わぬ国民を羊と表現。伝えたいメッセージの端々に政治への苛立ちや危機感と同じくらい、自分たちの意見に同調しない人達への侮蔑を感じてしまう。シニカルってより、厨二のニヒリズムに見えて興ざめちゃう。
広く世間に訴えかける映画ってより、自分たちの意見を強固にする作品にも思えた。

面白い部分もあるけど、褒めても貶しても怒られそう。誰も幸せにならない語り口に感じて、個人的には「う〜ん」て感想。
自分の住む都市部と、菅総理の地元・秋田など地方だと同じ政治政策でも見え方も違うはず。政治信条のバイアスは抜きにして、いろんな人の反応が気になる映画だと思った。



45本目
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