1987年の作品。
舞台はイスラエル軍の占領下にあるパレスチナのガリレア。ここで、村人が結婚式を挙げようとしている。ただ、占領下なので、イスラエル軍に許可を得なければならない。
でも、この村には不穏分子が多いとされ、なかなか許可がおりない。村長の息子の結婚式なので、村長が直々に交渉に来る。それでの許可は降りない。
いろいろあった上、条件付きで許可が出る。その条件は、司令官を招待すること。そして、24時間以内に結婚式を終わらせること。
まあ、それだけかと思いきや、村には全時代的な家長制度があり、男は強く、女は清くという男尊女卑的なルールもある。結婚式の締めくくりは初夜を迎えた二人の純潔の証をシーツにつけることだし、それを村人みんなが見ないことには終われないのだ。
でも、村長の息子である花婿は政治的なプレッシャーが強すぎて、うまくいかないと。
そのうち、村の不穏分子たちが、この際、イスラエル軍の奴らをやっちまえ、という機運も高まる。なぜか、子どもたちは大事な馬を逃してしまう。なんだか、政治的にも、制度的にとても重苦しいんだけども、なぜかところどころにユーモアがある。
たぶん、そう言う家長制度がまた色濃く残っていた昭和の時代に僕が生まれ育ったからだろう。それが、いちがい悪いことだと思えない節がある。別に肯定はしていないのだけれど、そこに確かにあった人の営みまでが否定されるのはやっぱりおかしいと思うだけだ。
とても、完成度の高い一遍の寓話を見た思いだ。
で、村民が伝統的なアラブの結婚式を挙げるまでを描いたM・クレイフィの劇映画デビュー作。平穏なたたずまいを見せるパレスチナの農村。だが、現実は厳しく、イスラエル占領軍が絶えずパトロールし、村民たちの生活は軍の監視下にある。そんなある日、村長ムクタールは息子の結婚式をアラブの慣習通りに挙げたいと思い、イスラエル軍の司令官に許可を願い出た。司令官は軍政のアピールにと結婚式を許可するが、血気にはやる青年たちは、この際に司令官を暗殺しようと企てる……。珍しいアラブの伝統的な結婚式を背景に、パレスチナの現実を浮き彫りにした力作。