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裁かるゝジャンヌのkayupanのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
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実際の記録に基づいたジャンヌダルクの裁判の再現。憤る司祭の誘導尋問への困惑や、悦びにも似た信仰心を持つジャンヌの感情の変化が、幾度も映される表情のアップで現される無声映画。荘厳で不穏なパイプオルガンがそれをさらに引き立てる。フランスを率い、イギリスの侵略から救った一農家の娘ジャンヌは、新たな民衆のリーダーとなることを恐れられ、既得権益の教会から宗教裁判を受ける。人間が作った宗教が大衆化・強大化し、支配組織がねじ曲がる中で、同じ宗教において狂信的死を選ぶ1人の人間。擁護する人々すら兵士が撲殺する。組織体系が怪しくなると、責任を引き受ける者を選び、罰することで組織を維持する。その規範の外部性は、最も知に貪欲だったソクラテスを民主主義が罰したように、神が最も敬虔な信者を断罪した。そして近代の法や科学を経過し、現在では繋がりすぎた世論が次の引責者を選ぶ。シンプルな歴史的・宗教的映画ながら人間社会が映し出された作品。
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