ミシンそば

裁かるゝジャンヌのミシンそばのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
3.6
単品では出てるけどBlu-rayボックスには入っていないから観る機会ないかなーと思ったら劇場でやるので観た次第。
母国デンマークの不況を理由に欧州各国を渡り歩いていたドライヤーがフランスで撮ったキャリア中期作(すでにサイレント映画が下火の時代)。

ドライヤー作品の特色と言えば、他の追随を許さないほど正確な空間把握と強い信仰心。
信仰心の部分は無宗教者の自分にはノイズだが。

百年戦争後期のジャンヌ・ダルク裁判が主題につき、軍事指導者としてのジャンヌではなく、虜囚としての弱々しいジャンヌが全編を通して、描き出されている。
国際情勢上、および宗教上仕方のないことだが、ジャンヌにとっては極めて不利な裁判(ほぼ彼女の有罪ありき)なので、サイレントではあるが審問者らのネチネチした声が聞こえてくるようだった。
一方で、自身の企画ではあるがドライヤーの視点も大分客観的で、自分にはジャンヌ自身もファナティックに映った(サイレントだからこそ、余計に目で魅せる演技が際立つ)。
史実考証は大分正確なようで、ファナティックな部分と恐らく10代の女性の弱い部分、死を怖がる当然な部分も克明に描かれている。

面白い映画ではないが、こういう古き良きサイレントを高画質で観れたのは得難い経験だった。