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月光の囁きのwisteriaのレビュー・感想・評価

月光の囁き(1999年製作の映画)
4.3
最近知り合いになったとても素敵な女性が、スピッツが好き、人生の苦境にスピッツの曲をきいて支えられた、といったことを語ってくれたのを聞いて、自分はそこほど熱心なファンというわけではないけれど、ああ、スピッツは今もしっかりスピッツなんだなあと思うと共に、そのときは挙げられなかったのだけど、いまふと、そういえばスピッツの「運命の人」が主題歌のこんな映画もあったなあ、と思い出してレビューしています。

原作は喜国雅彦の漫画で、塩田明彦監督の初長編作。主演は水橋研二とつぐみ。この映画でのつぐみがちょっと息をのむ美しさで。。さすが塩田明彦監督、デビュー前に『神田川淫乱戦争』(改めてこう書くと凄いタイトルですね笑)で黒沢清の助監督を務めていただけあって、女性の魅惑的な撮り方を心得てます!

内容は、底抜けに爽やかなド変態倒錯青春映画、というものがもしあるとしたら、それはこれです(笑)恋愛における関係性はいつだってそれぞれに固有かつ特殊なもので、ああすればモテる、こんなことしたら嫌われる、などといった一般論などには意味がない、という逆説的な普遍性を体感させてくれる、そんな作品。エンディングでの「運命の人」のかけ方がとにかく絶品!

内容からとても万人に薦められる映画ではないけれど刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる。冒頭のスピッツファンの若い素敵な女性にもお薦めしたものか、非常に逡巡しております(笑)

原題の『月光の囁き』は、視覚と聴覚、それに「囁き」という言葉の内包する近しい触覚的なニュアンスを複合した共感覚的な表現で、とても繊細で洒落ていると思う。英題は"Moonlight Whispers"。逆翻訳すると、月光は囁く、といった感じかと。
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