ノラネコの呑んで観るシネマ

ONODA 一万夜を越えてのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
4.7
フランス人監督が描く、最後の日本兵の30年。
小野田さんが帰国した時のことは、かすかに覚えているし、だいぶ昔に幾つかのドキュメンタリー番組も観た。
本作を鑑賞しながら「あーそうだった、この人中野学校の出身の間諜だった」と色々思い出してきた。
帝国軍人でありながら、死ぬことを許されず、何年でも潜伏することを命じられた秘密戦のプロ。
キャラクターの特殊な背景が、決断に大きな影響を与えているのは間違い無かろう。
何しろ彼はただ隠れていただけでなく、ずっと現地で戦争を続けていたのだから。
3時間の上映尺は長さは感じるが、決して冗長ではなく、むしろ主人公がジャングルで過ごした遠大な時間を実感できる。
当初四人の仲間がいたのが、時間の経過と共に関係性が変わってくるのが興味深く、二人一役で小野田さんを演じた津田寛治と遠藤雄弥が素晴らしい。
島の豊かな自然と人間の矮小な争いの対比は「シン・レッド・ライン」や塚本版「野火」を彷彿とさせる部分も。
また、いい意味で「日本人監督なら絶対こうは撮らないよな」というショットが多々あり、この辺りは異文化クロスオーバー映画ならでは。
じっくりと描かれた、時代に囚われた男の内面のドラマは、ある種の日本人論でもあり、見応えはたっぷり。
しかし本作といい「MINAMATA 」といい、外国人監督が描く日本と日本人に、これほどの傑作が続くとは。
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