垂直落下式サミング

ガンパウダー・ミルクシェイクの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
仕事中にヘマをした女殺し屋が、所属する組織と敵対する組織の両方から命を狙われることとなり、元殺し屋の三人の女たちが仕切る武器卸売業兼図書館に助けを求める。クライムアクション映画。
みんな折り畳み式ケータイを使っていてハイテクは出てこないなど、時代設定にこだわりがあるようだ。女の子を守りながら、刺客を蹴散らして逃げ延びていく主人公だけど、なんか好感度は低め。プロのくせに何回も重大なミスしまくるし、仏頂面のわりには情に流されるし、自分の意思で軽率に周囲を巻き込んでいくので、子供時代のトラウマと悲劇を見せられても、あんまり共感できない。
途中で再会できたお母さんも、なかなか嫌な女。この母あってこの子ありって感じだ。旧友のはずの図書館レディース特攻隊も、彼女の態度にややキレしているみたいで怖かったけど、ぜんぜん悪びれる様子がないから、そりゃ怒るわな。
ともあれ、アクションの映画である。ドラマよりもソコだ。『続夕日のガンマン』みたいな効果音や、刺客として送り込まれる三バカ、額汗と目元アップのカットインなど、マカロニ・リスペクトは面白かったけど、その他のみせかたはそんな上手くないと思った。
やたらスローモーションなのも芸がないし、違う場所で同時進行するつなぎもシーンの連続性が弱くてすぐ飽きる。一時消費されてハイおしまいな凡作ではある。
個人的に一番の見所だと思うのは、フェミニズムと対になるミソジニー側の主張も描かれているところ。敵のボスのおじさんがカメラ目線で、「娘たちのことは愛してるけど理解できなかった。お前に殺された息子とは男同士だから深く通じ合ってたんだ。」みたいなことをいう場面は、これ脚本家か監督かわかんないけど、このセリフ考えた奴の女性観か、もしくは男権主義的なものへの批判精神か、なんにしろ思想的なものがグッと前にあらわれていておもしろかったな。
めっちゃミソジニーで、めっちゃマチスモ。だけど、これにめっちゃ共感してしまうのは、わりとガチで女が嫌いだからか。部屋の隅っこでクスクス笑うし、ユニコーンでピンクでロリポップなわけじゃん。我ながら雑くて浅い女性観だなあ。敵の台詞だから、こんなん真に受けちゃダメだけど、僕にとっては核心に近い言葉だったと思う。