えにし

グレート・インディアン・キッチンのえにしのレビュー・感想・評価

4.1
婚姻によりインド伝統社会に蔓延る父権主義に従属することを要求され宗教的慣例に自由と尊厳を奪われたひとりの女性が、個人主義——インターネットの普及とSNSの社会的浸透というデジタル化の波に運ばれもたらされた——に基づくジェンダーフリー思想に共鳴していく話。めちゃくちゃ雑に言うと、"飯炊き女"でいることを強制される話——が尺の9割を占める。男性中心社会に虐げられてきた女性の権利を取り戻そうという気運はここ10年ほどで著しく高まりを見せているけれど、それを概して"フェミニズム"と称して特別な思想であるように喧伝するのもまた違うような気がする。というのも、いや、人として当たり前の権利を主張するのに性別は関係ないやん。と思うし、"フェミニズム"を標榜する人が"出る杭"として打たれているのを見かけるのもそんなところが所以なんじゃないかと思うからであって。しかし俺も男性中心社会がもたらした恩恵をあずかっているひとりであり、そうした下地を失っては生きていけないほどには贅沢かつ傲慢になってしまったことは否めない…。ただ、せめてパートナーのような大切な人が性別による不当な差別を受けないように、与えてもらったらそれと同じだけ与え返そう、と本作を観て矮小ながら思った次第である。ま、俺にはパートナーいないんですけどね!!!個人の集合が社会である——と仮定するのであれば、一対一の関係の時点で尊重を欠かさない姿勢こそがより良き社会を生む一助になると、俺は信じたい。それにしても本作に出てくる男どもはことごとくうんざりしてしまうほど、自身が被っている利益と、また女性にもたらしている不利益とに無自覚すぎるので、みんなちんぽもげろと思いながら観ていた。料理ができたり、掃除や洗濯ができることを最近では"女子力"と呼ぶ風潮があるようですが、それらはすべて人間なら、大人であれば性別にかかわらず皆できて当たり前のことです。"女子力"ではなく、あえて言うとすれば"人間力"と呼ばれるべきでしょう——高校生のとき家庭科の先生が言っていたことを思い出した。いやまじで食べカス皿に乗せたり片付け手伝ったりするくらいはしようぜ?ちなみにヒンドゥー教には女性の生理を穢れとみなし一定期間隔離する風習(チャウパディと呼ぶらしい)があるということをまるで知らずショックを受けたので、備忘録としてここに記しておこうと思う。
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