えにしさんの映画レビュー・感想・評価

えにし

えにし

ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版(1973年製作の映画)

3.9

空振りと問わずがたりの繰り返し、お茶濁そうにも上滑り、ほとほと呆れて気後れで逃げ出したのに、後をつけてくるのはどうして
息がつまるくらい苦しくて、吐きそうなくらい悲しいのに、泣きそうなくらい嬉しい、そ
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レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)(2022年製作の映画)

4.0

理想や夢の世界の中でだってままならないことばかりだから、カチンコじゃ止められない物語の来し方行く末にすてばちになることも馬鹿みたいだって分かったでしょう
頭の中のゴチャゴチャが形にならなくたって、目で
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ポエトリー アグネスの詩 4K レストア(2010年製作の映画)

3.5

やせた土の上に落ちた杏の実も、宙に浮いたままのシャトルも、時の川を上ってはいかないけど、花はまた同じ季節に咲いていた
押さえつけても隙間からあふれ出してくるほどの うれしい や かなしい が、ひとりで
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ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)

3.7

鳥のさえずりや虫の声、かすかに差し込む陽の光さえも、混ざり合って溶けていく
洋梨のくびれに触れるたび、二度とかなわない夢を見てしまう

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.8

当たり前が当たり前じゃない世界の片隅で、雨に打たれても走り出さなくなっちゃった体は泣いている
私の わからない が わかりたい に変わる瞬間を、君の孤独が君だけのモノである意味を、ぜんぶ飲み干すまで生
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ほかげ(2023年製作の映画)

3.5

盗んだ瓜が暗い部屋の蝋の火になって、つかの間、傷を忘れさせてくれるのに、ふすまの奥までは照らせない
やけのはらの心がゆきかう街で、気休めのかけらを舐め合いながら、どこまで騙せるのかな?
乾いた筒の音が
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.2

初めてが初めてじゃなくなったり、裸足じゃ痛いから靴を履くようになったりする度、世界は色づいていくようで、その実混ざり合って濁っていった
散々楽しいモノを食べて、飽きるほどむごいモノを見てきたのに、僕た
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.8

歴史からこぼれ落ちたとるにたらないものたちのアンセムは、とりどりの孤独を混ぜ合わせてできたドーナツの甘い香りに弾ける
凹んだぶんだけはみ出て、夢を見過ぎたぶんだけ唇をかむ
これが泥の舟でも、水の流れに
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.3

飽くなき世界を尻目に、誰に見せるわけでもない自足の毎日を繰り返すなかで、時々吹くそよ風が、まだ涙があることを教えてくれる
だから色違いの孤独に気づいて微笑むことができるし、ネガの夢から目覚めた朝も僕は
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栗の森のものがたり(2019年製作の映画)

3.3

そのときが来るのをただひたすら待っていたのは、諦めではなくプライドだったことを、独りの木の下で知る
もしも、やまさか、に意味がないことまでをも飲み込んでくれる栗の森の記憶が、紅い葉に包まれて、村ごと葬
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コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版(1993年製作の映画)

4.0

乾いた筒の音がこだまする中、盗んだタイヤは転がって、ゆりかごを運ぶ歯車は回りだす
ゆらゆら揺れる鏡にうつった私はループを抜け出せなくて、でも本当は、行ったり来たりの中のナンセンスな幸せを転がり続けてい
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少年、機関車に乗る 2Kレストア版(1991年製作の映画)

2.5

セピア色の知らない世界は、スカスカの足下みたいに覚束なくて、でも穴を覗くみたいにワクワクする
列車に運ばれているようで、実は列車が運んできたはじめての景色に身を浸しながら、色づいていく

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.3

パラダイスに憧れていたけど、現実は死ぬほど退屈なルーティンでヒマをつぶすだけだった
傷ついたり不完全だったりがあっても、いや、それがあるから、いたちごっこみたいに理由を探す毎日に訳分からん恋を落として
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.5

スクリーンの中のアーネストとそれを見ている私が共鳴したのは、多くを語らぬ序盤から中盤にかけて何が起きているかがてんで分からなかった私と、知らず知らずのうちに陰謀の波に飲み込まれていく彼とが重なったから>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.1

全クリしちゃったゲームみたいなゆるい悲しみの中で、だったら指を咥えて誰かを、何かを妬み続けていた方がマシだった?と問い続ける
グラグラの幸せを、不恰好でも心地よいダンスを勝ち獲ったはずなのに、壊れたテ
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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.1

帽子を目深にかぶればかぶるほどかえってボロが出るような街で、今日も鏡に嘘をついている
何もかも見透かされているような街の光から水色の夜に逃げ込んで、傷つけたくないが傷つきたくないだけなことに明け方の影
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アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

2.8

たとえすぐそばに、隣にいようとも、あなたはエイリアンで、何も分からない、分かれない
だけどフェータルな傷を隠してできた同じ孤独をかち合わせたら、少しだけ分かち合える

アシスタント(2019年製作の映画)

4.1

先のつぶれたペンで行き場のない言葉を書き殴っているような毎日が、嬉しいと悲しいの境目を消していく
It's not your fault.もI will not let you down again.
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あしたの少女(2022年製作の映画)

-

食べきれなかった今日を明日に回して、それすら食べきれない明日がまた来るから、無理やり消化して代わりに涙を忘れていく
望めば望むほど夢が遠ざかっていく世界の中、誰も知らない場所で踊る
わざと見逃したSO
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ドント・クライ プリティ・ガールズ!(1970年製作の映画)

4.3

鏡に嘘をつくたびに、本当は知っていたはずの青春の意味を忘れてしまうから、矛盾でできた部屋から抜け出した
孤独が教えてくれた優しいメロディでこころが裸になったら、うたかたの夢から覚めても、その痛みで生き
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トルテュ島の遭難者たち 4Kレストア(1976年製作の映画)

3.3

ピンクのシャツと真っ白なセットアップのままでロビンソン・クルーソーを騙ったって、緑に千切れて、青に揉まれて、かたなしになるだけだって、体で覚えなきゃ分からない
モノが溢れ、できることが増え過ぎた世界で
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.3

無料でもらった石でできた塔を壊して、絵空事の中で嘘じゃない意志を積み重ねていく
自分の神様を自分で見つけるために、背中のファスナーを開ける

若き仕立屋の恋 Long version(2004年製作の映画)

4.4

隠れているからその先を見たいと希うのに、すべてが見えてしまったら終わりが来てしまう気がして、色のついた粽と、香りを纏ったドレスで、あなたに溺れる
あなたが長い旅に発ったあと、あの手の感触だけが残ってい
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.4

解らなかった、から解れなかった、に変わっていったのは、巻き戻せない思い出があることを知ったから
肩で息してるのに笑みを浮かべていたことも、ギプスを外そうと躍起になっていたことも、夜の海に呼ばれていたこ
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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2023年製作の映画)

3.0

信頼を確かめるための言葉で信用を失ったり、勝手に傷つけたくせにそのことで勝手に傷ついたりして、誰のことももう愛せないって思ってたんだろう
フワフワも洗ったら固く重くなっていくように、誰かがヒビを入れて
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ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)

3.0

断りなく大合唱する本当の心をよそに、体はカーテンの境目を溶かせない
虚構の地下から現実の地上へ抜け出しても、ショウウインドウは偽者を映し出している

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

3.5

ビルの隙間も、地下鉄も、ニューヨークの街それ自体も、袋小路のままで過ぎていく
懐かしい服が小包の中から出てきても、フーテンを貫ける覚悟のある体がある

街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

-

靴ずみの黒と洗剤の白に塗れることの繰り返しにうんざりしちゃって、花束だって気休めにもならなかった

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

2.7

いつ付いたのか記憶にない傷が最近は増えてきて、なんでもないようなことでまた痛み出す
外国の言葉を訳すように気持ちを訳せはしないけど、傷の痛みを忘れることができるのも、細くて太い繋がりだけだった

一晩中(1982年製作の映画)

3.5

キューでつつかれた玉どうしがぶつかるみたいに抱き合える夜気のなかで、きっと鳥のさえずりを恐れていた
たまたまそこに居合わせただけの、物語になり切らないロマンスの切れはしにだったら、溶けちゃいそうなほど
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東から(1993年製作の映画)

4.0

急な流れの歴史をよそに、息を止めているかのように穏やかな時間の流れだけがある
路面電車が横切る間、飛行機が動き出す前、家の中レコードに針を落とすのと同じ空気がただよう
みんな待っているけれど、映画は意
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怪物(2023年製作の映画)

3.4

色々な人がいて、みんな好き好きに色々なことを言うよ
だけど気後れや早合点が雑にコラージュされた妄想を急かすから、誰もありふれた幸せにありつけない
過不足のないやさしさは難しいけど、線路が拓けた先に永遠
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EO イーオー(2022年製作の映画)

4.0

阿漕な信号が点いては消え、消えては点いてを繰り返している
人生の意味が分かったその日から、灯りを求めてさまよう人たちのスペクトラムを、ただじっと見続けている
ずっとじっとしていられない彼方をよそに、見
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小さき麦の花(2022年製作の映画)

3.7

めずらしい血を採取するためだけの車や、本当は手の届かなかったコートが、ふたりのリズムを揺らしている
いつかすべて土に還る、と言い聞かせていたのに、ずぶ濡れになりながら守ったレンガで造った家が、荷車を引
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