サトタカ

スターダストのサトタカのレビュー・感想・評価

スターダスト(2020年製作の映画)
3.8
デヴィッド・ボウイの遺族(というより主に権利団体だと想像する)から楽曲の使用許可が下りなかった、とても残念なボウイ映画。

とはいってもボウイを題材にした98年の映画「ベルベット・ゴールドマイン」でも曲を使えなくてそれっぽい曲でお茶を濁していたんだよね。それでも豪華キャストやグラムらしいメイク、コスチューム、ステージングで魅せてくれた。ボウイっぽいキャラ(ブライアン・スレイドという名前だった。デヴィッド・ボウイという名前を使うことも断念していたのだ)を演じたジョナサン・リース=マイヤーズはかなりのイケメンかつ妖艶で、イギー・ポップっぽいキャラ(カート・ワイルドという名前。イギーにカート・コバーン風味が添加されていて最高)を演じたユアン・マクレガーはセクシーでパワフルな肉体派ロッカーになり切っていた。

「ウォールフラワー」、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」なんかではボウイの楽曲を使ってるのでBGM的な使用はOKで、ボウイを思わせるキャラをメインにした映画ではNGってことなのだろう。

自分は40年以上前からの古参ボウイファンなもので、この「スターダスト」は公開時、劇場で観ようか迷ったが、トレーラーに映るボウイ役のジョニー・フリン(シンガーソングライター・俳優)のケツアゴが気になって観に行くのをやめたのだった。時代的にもジギー・スターダストとして爆発的な人気を得る前の話(David before Bowie)ということでそれも若干観る気を削ぐものがあった。

膨大な楽曲を作詞、作曲し、ギター、キーボード、サックスなど様々な楽器を弾きこなし、各国でゴールドディスクを獲得しまくり、音楽プロデュース、舞台俳優、映画俳優としても一流だったマルチな天才デヴィッド・ボウイ。ファッション・デザイナーの山本寛斎、写真家の鋤田正義とも仕事をしたし、日本に長期滞在したこともある日本びいき。

この映画では冒頭からボウイがまとう神秘性の象徴ともいえるオッドアイが映し出される(しかし映像にシャープさが足りていない)。若いころのケンカによる怪我で左目の瞳孔が常に開かれており、左右の目の色が違うのだ。そして独特の歯並び。前歯が少し下がっていてその両脇の歯と犬歯が目立つ、爬虫類っぽい口元が再現されていた。「ボヘミアン・ラプソディー」のラミ・マレックの出っ歯よりいい出来だろう。ボウイの歯は後にきれいに矯正されてしまい、個人的には魅力が薄れたように感じた。普通の人と違うことが彼の売りだからね。

また初期のヒット曲「space oddity」をイメージさせるカウントダウン中に「WHAT FOLLOWS IS [MOSTLY] FICTION(事実にほぼ基づく物語)」という表示がスクリーンに映し出される。これはほとんどがフィクションですと言っているようなものだ。ボウイ大好きな監督がまだアメリカではほぼ無名だった頃のボウイをモチーフに、わりと好き勝手な映画を作ったと考えていいですよっていうメッセージと受け取った。ボウイの楽曲が使えないため、観光ビザのみで単身渡米したイケてない1971年のボウイの珍道中をロードムービーに仕立てたという感じ。

マーク・ボランはすこししゃくれすぎだし、ギタリストのミック・ロンソンも本人よりイケてないのはちょっと残念。二人ともボウイよりは似ているけどね。

後の楽曲使用許可がおりた映画『ムーンエイジ・デイドリーム』と比べてもよく健闘している一本だと思う。
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