松竹は 千代に八千代に大メロの ラヴロマンスに 苔生えるまで
これは傑作だ!ここ最近観た映画の中で一番魅せられ、惹き込まれる作品だった。
年齢性別が異なる男女6人がそれぞれの立場で自らの人生観を貫き全うしようとしてもがいている。原作小説をも読みたくなるほど、人物一人一人が丁寧に描かれていた。1950年代の中村登監督は多くの傑作を世に送り出しているなぁ。
この頃の有馬稲子はなんとも可憐・清純なお嬢さん、高峰三枝子は色香あり麗しく、杉田弘子は常にヴァンプ・あばずれ役が似合う笑
アイスホッケーの試合も映り、嬉しい限り!女を渡り歩くプレイボーイ川喜多雄二も背が高くハンサムだ。
不思議に思ったのは、えらくセリフに「全然」が多いということ。直後に来る言葉を否定的にも肯定的にも強調するために、登場人物それぞれが「全然…」と何度も言っている。
新しい世の中を新しいスタイルで生きていると思っていても、それは外見の装飾だけで中身は依然として古い価値観に縛られている…といったそれぞれの葛藤。お金で買えないものがある、それは愛情と努力。学生であるヒロインは、誠実なボーイフレンドを選ぶことにより、生まれ育った老舗紙問屋を捨て、親戚と縁を切り、母と二人で東京で暮らしていこうという思い切った行動をとることに躊躇する。ここでの「責任は二人で持つんだ」というボーイフレンドの言葉は、「結婚」というものが一人のものではないと改めて気づかされ、ハッとさせられる。クライマックスへと向かう有馬稲子の走る姿、川辺で待つ石濱朗の川の流れを見つめる姿。「僕と将来を約束してくれたまえ」これぞ松竹大船調!