ハレルヤ

英雄の証明のハレルヤのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
3.8
イランで借金の返済が出来なくて刑務所に収監されていたラヒム。仮出所した時に恋人が偶然金貨の入った鞄を見つける。それを借金返済に充てようと思うが、良心が咎め持ち主を探し出し返すことにした。その件が世間に広まり、善行と称えられるも、SNSから沸いた噂によりラヒムは突如窮地に追い詰められていくヒューマンドラマ。

傑作「別離」などを手掛けたイランの名匠アスガー・ファルハディ監督最新作。人間の本質に迫る描写に長けた印象だったので本作も楽しみにしていました。

金貨入りの鞄を拾うも悪用せずに持ち主に返す。普通に考えたら悪魔の囁きに乗らずよく返したと思うことですが、やはり世間はそう思わない人も出てくる。

SNS上では「本当に返したのか?」「自らの好感度を上げるための自作自演じゃないのか?」などと心無い言葉を投げ掛けてくる。そんな噂を払拭するために持ち主を改めて探そうとするラヒム。でも名前も住所も知らなくてなかなか見つからない。

その間も悪い噂は広まり焦りが広がる。その結果、嘘に嘘を重ねてしまい引くに引けなくなる。本当に返したのにそれを疑われ、メチャクチャな状態に陥るラヒムの姿に胸が苦しくなります。

本作はイランでの出来事ですが、日本でも同じような事が起きても全く不思議ではありません。今の情報化社会、特にSNSで人生を狂わされる人の苦しみが伝わってくる内容。

余計な演出は一切無し。そのまま登場人物たちの日常を撮っているかのような作風はリアル。結末もスッキリするものではなく、アスガー・ファルハディ監督の持ち味が生きている良作だと思います。
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