磯野マグロ

レッド・ロケットの磯野マグロのレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
3.8
【手ぶらで来てゴミ袋持って去る】56

尾羽打ち枯らし、手ぶらで故郷に帰ってきて元妻の家に転がり込む負け犬主人公マイキー。この街は、彼はもちろんどいつもこいつも、あーと頭を抱えたくなるような連中ばかりで、そんな彼ら彼女らが住む家のリビングに流れるのはドナルド・トランプの選挙演説、という、もうなにもかもうんざりな世界。そしてこれが2016年のテキサスのどこにでも転がっていた、そう珍しくもない現実だった。
唯一、現実感がないほどかわいくてだらしなくてエロい少女ストロベリー(もうすぐ18歳)だけが、このあまりにも救いのない世界の中でピンク色の光を放っている。
徹頭徹尾ほんとうにクズで、こいつには不幸になってほしいと思いながら見てたマイキーだが、あまりにも適当で人任せで自分勝手な夢を語るあたりから、ダメダメな人ばかりのこの映画のたったひとつの夢なんだし、うまくいっちゃってくれないかな、と思うようになるのが不思議。
でももちろんそうは問屋が下さない。あまりにもカスな企みがばれ、裸で元妻の家から逃げるマイキー。さすがはポルノスター、立派なレッド・ロケットを振り回して夜の闇の中を走る。なんとか家に戻るも有り金巻き上げられ、みんなに笑われながらゴミ袋に入れたわずかな荷物と一緒に追い出される。
この映画のラストシーンで彼がみたものはなんだったのか。「フロリダプロジェクト」を思い出させる超現実的なエンディングがにくい。
磯野マグロ

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