Automne

レッド・ロケットのAutomneのレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
3.7
現代の貧困と地元のゆるいゲットーの日常を描かせたらやはりショーンベイカー監督は味が出る。『フロリダプロジェクト』のときと同じように、アメリカ郊外のだだっ広さと人間の行き切った何者かになりたいという欲求から堕落しドーパミン出切った成れの果て、その先の物語を描いているのがずっとどんよりしてて良い。それなのに夕日や街からつながる水辺は綺麗であることの皮肉。
マイキーは自分を誤魔化し続け、そうして最後まで己を振り返ることは全くなく、内面的な変化もなく、制裁といえばラスト近くでちょっと締められるだけでかなり運が良く、やったことといえば籍入れっぱなしの元妻の家に居候してドーナツ屋のパツキンJKをナンパしたことであり、そう考えるとカタルシスや爽快感は物語として欠ける。けれどところどころ良いシーンはあって、ジェットコースター🎢のところ、妻からの罵倒の顔面ガッツリフォーカスのところとかめちゃ好きだった。
全体を流れるどうしようもなさは、資本主義の行き切ったアメリカ社会を風刺していて、テキサスというロケーションや挟まれるトランプの映像にはそれなりの意味がある。マイキーも同じようにMAKE MIKEY GREAT AGAINをしようとしているわけで、レッドロケット🚀というタイトルも男根とテキサス(共和党の赤)を想起させる。
しばらく観たあとこの映画についてじっとりと考えてしまうような、それでいて中身のないような、不思議な作品でした〆
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