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ニトラム/NITRAMの010のネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ひたすらキツいだけでおもしろくはない。
人間関係に要求される社会性を獲得しえなかった個の孤独、よりも、その両親が抱えた人生を想ってしんどかった…
前半はそれでも我が子が可愛くて、大切で、未来の幸せを願っている言動や父子の笑顔から愛情も伝わって、外野には想像もつかない苦悩とともに幸せの形だってあるはずよな、って見えたからこそ、あのシーンは震えたなぁ…
長くて静かな俯瞰アングル、優しく撫でる姿勢そのままで唐突な暴力…そんなバカな、っていう大混乱と絶望感。精神的にとどめを刺された父にも、心を殺されたように乾いた表情の母にも感情移入してダメになりそう。
事件当時の描写は銃声と構えだけで、血の一滴も見せない演出も印象的。画面のなかはずっと燦々たる日常のまま、彼の内側だけが脅威で異物だった。
実際の事件をもとにした作品とはいえ、どこから脚色なのかしら。無免許でもお金さえ出せば銃器がほいほい手に入る当時の状況に問題があったのはよくわかったんだけど。他者の機微に無頓着で、世の中の普通とはどうしても折り合えない、自己の孤独と届かない外界に不満を募らせている、幼稚で火器好きな人格になぜか労せず拠点と資産が与えられたあの因果は一体…
銃は嫌い、この家には置かせないって唯一毅然と突っぱねたヘレンの、亡き部屋いっぱいに増やされていく銃器には目も当てられなかった。
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