ナガエ

インフル病みのペトロフ家のナガエのレビュー・感想・評価

インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)
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いやー、驚愕的に理解不能な映画だったなぁ。だからと言って「つまらなかった」わけでもないのだけど、ただ「面白かった」とはちょっと言い難い。

初めの1時間はウトウトしながら観ちゃったけど、後半1時間半はちゃんと起きて観てた。のに、全然意味が分からない。ストーリーや設定で理解できたことは、「インフルエンザにかかって咳ばっかりしてる主人公は、奥さんと離婚し、子どもと時々会う関係。小説家志望なのか?」「その元奥さんは図書館で働いてて、あとなんだかよく分かんないけどめっちゃ強くて、時々人を刺したりしてる」ってぐらい。あとはもう、なんのこっちゃ???

途中からなんとなく理解したのは、「リアルの世界」に混じって、どうやら主人公のペトロフの「妄想」が混じってるっぽいぞ、ということ。ただ、どれが妄想でどれが現実なのか、区別される箇所もあればそうでない箇所もあり、なにがなんだか。

とにかく、「観客に寄り添う語り部的存在」が映画の中に皆無なので、状況がとっ散らかったまま進んでいく。観客が注目すべきところがどこなのか分からず、「本筋」や「核」が何なのかも掴ませず、ただ「何かが進行している」という情報だけを捉えることができる、という感じだ。

だから、ストーリーを理解することは、途中で諦めた。

一方、映画を観ていると段々、「魔術的な音楽を聴いている」みたいな感覚になってくる。五感を奇妙に刺激するというか、良いとか悪いとかではなくて「囚われてしまう」みたいな音楽がたまにあるけど、そういう感じ。アフリカとかの部族の祭りで、エンドレスで同じリズムの音楽が鳴り響いてトランス状態に陥る、みたいな感覚だろうか。それを、視覚情報でやっている、という感じがする。

とにかく僕の目には、映画の中で展開される状況に「言語化出来る意味」を見いだせず、ただただ「五感のどこかを刺激するもの」としか受け取れない。外国で歌われている音楽を聞いても、歌詞の意味は理解できないが、音楽としては受け取れる、みたいな感じだろうか。ただ、「外国語の曲」の場合は「言語化出来る意味が見いだせなくてもしかない」と思えるが、それが「映画」の場合はそうは思えない。だから「自分の頭の中の認識」と「受け取られる感覚」に大きな齟齬を感じて、気持ち悪さが残る、みたいな状況だった。

しかし、なんとも言えない映画だったなぁ。なんとも言えない。
ナガエ

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