本作品にも、エリザ・ヒットマン『Never Rarely Sometimes Always』やレイチェル・ゴールデンバーグ『Unpregnant』、セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』と同じく、少女の堕胎を手助けする存在が登場するが、それは彼女の母親である。というか、そもそも主人公は母親なのだ。しかも、マリアと同じ境遇で学校を止めさせられ、家族からも見放され、たった一人で娘を育ててきたらしい。そんな過去を知っているからこそ余計にマリアは中絶を望み、母親も二つ返事で協力を申し出る。『Unpregnant』でも娘の中絶に理解を示す母親が登場したが、全てが終わった後だったことを考えると、母親が積極的に協力してくれるという作品は初めて見たかもしれない。また、後にアミナの妹ファンタも登場することで、女性の自己決定権についてBONDよりも一つ上のSACRED BOND、つまり家族の結びつきの観点で論じていくことになり、話題の中心がコチラにあったことを改めて提示する。