TOT

MEMORIA メモリアのTOTのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
4.5
主人公の不可思議な音体験を追っていたら、いつのまにかコロンビアに抱かれている美しい微睡みの旅。
土着と外来の人の記憶の残留思念が音になり、自然と人体と映画の境界を震わせて、遂には溶け合わせて、幽玄の世界に至る。
盟友サヨムプーの撮影や現地スタッフの仕事(音楽めちゃくちゃ良い)が合わさって、遺憾なくアピチャッポンらしい初海外制作作品は、いつも通りにわからなさを内包して心地よい。
密接する死の気配、複雑な暴力と争いの歴史を持つ土地の表現、土地と人間のマジカルな融合は『トロピカル・マラディ』や『ナブアの亡霊』『ブンミおじさんの森』などの過去作も思い出す。
ティルダ・スウィントンの風貌と声音の異質さは、彼女が外来者であることを際立せ、物語が変わる瞬間に更に印象的になる。
自身は空っぽで、何かに導かれて初めて体を震わせて音を出す楽器のような彼女の演技と、そこに響き合うようなエルナン役のエルキン・ディアスの演技の化学反応も良い。
寝転がるシーンの長回し、完全に土地と一体化していたわ。
『ZAMA』のダニエル・ヒメネス・カチョがちょっと出てたのも嬉しい。
相変わらず眠くなるけど気持ちいいし、公開されたらまた観たいし(良い音の状態でありますように)ポスターとサントラ(あるなら)欲しいです。
TOT

TOT