hi

わたしは最悪。のhiのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.7
【The Worst Person in the World】
↑原題の破壊力が半端ない(笑)

まぁ、
どんだけ"最悪"なのかと思ったが、ヤバい!結構ちゃんと嫌なやつだ!でもわかりみが凄い!あまりに正直すぎて辛辣な発言多めの主人公ユリヤにギョッとしつつ。映画全体はテンポが良くギャグもある、しかし鑑賞後あまりスッキリしない!でもなんだこれ見たことない感じ??めちゃくちゃ面白いじゃないかーって、私は思いましたヨ。

現代の男女に起きうる問題を恋愛や家族という人間関係を中心にまだ不安定な20代後半から30歳までの主人公の目線で大人のモラトリアムを描きます。 内容はロマンス映画というにはあまりに社会風刺が過ぎるなとはおもいますが、オスロの街や風景、光の表現、登場人物の表情一つ一つが丁寧に撮られていて、ロマンス映像も最高に映画的に作られてて、人生の悦びや一瞬の煌めきや世界の美しさに溢れている映画でもあります。

一方で
大半の女性(人間)がそうであるようにユリヤはスーパーウーマンでもなく、才能溢れる女性でもなく、崇高な信念のある強い女でもなく、はたまた優しくて可愛げのある献身的な女性でもない。。。(美人でクレバーではあるけれどいかんせん飽き性)

まだ何者でもない自分にイライラしつつ、他人から役割を与えられることには違和感と不安が付き纏う。(妻や母親になること、、) 未来の自分への期待と不安、承認欲求からまだ解放されていない彼女はこの器用貧乏地獄と、不安定な精神状態から抜け出せるのか??

ヨアキムトリアー監督のインタビューでも話されてましたが
この映画は、なにかを成し遂げる過程の物語ではなく、都市に生きる現代の若者が感じるプレッシャーを描いた映画なんですよね。そこがモヤモヤする理由でもあり、共感を得るポイントでもあります。


漫画家のアクセルがラジオ番組に出演してるときの"僕だけのせいではない!"には、その言葉の最低さの裏にある時代がそうさせてきてしまった背景を考えずにはいられなかったです、、70〜80年代子供の頃から大好きだったコミックやアンダーグラウンドなパンクなカルチャーの過激な表現は、カウンターカルチャーの象徴であったとおもいます。その後、世間が担ぎ上げた挙句に、アニメ化の流れにより、今までの作品を冒涜されることにはそら怒りますよね。。あまりに有名になってしまったがための苦しみなのかもしれないが、格好の時代の餌食でしかない。。そこからの小さく痩せていくアクセルがなんとまぁ不憫なことか、、、そして自分を過去に肯定してくれた男性を繋ぎ止めるように写真に納めるユリヤ。。。わー、、、この構図は単純な恋愛とは呼べない複雑さがありすぎる!!!


男も女もここ数年の価値観の急激な変化についていけてないんですよね、、社会の仕組み、制度も追いついてない。

"好きなことやって才能を開花させた自立した女性" それが都市で生活する女性の目指す形だと、いつの間にか我々は刷り込まれてるんですよね。。
子供を産まない自由もある反面、
いざ妊娠するとやはり母親になるべきかもしれない?!母親やれるかも??!と、、自信を取り戻すべく死にかけの元彼に助言を求めるユリヤ。
また、君の文章表現は素晴らしいよと彼氏に言われても、"いつからそんなに本とか読むようになったの??"と苔おろすユリヤ、、もう混迷に混迷をかさねる!

途中、ドラッグトリップシーンで血まみれのタンポンを投げつけるシーンは強烈だったなーw 彼女の苛立ちがよく表現されてる!

主人公ユリアも含めて、
でてくる主要な人物たちは全部、良いところ嫌なところ持ってるんですよね。それがこの物語を複雑にしつつ、全員が立体感のある人物像として交差している感じが良かったです!

ユリヤもアクセルもアイヴィンも人間臭くて全員好きになる!

全然worst personじゃないですよ〜◎◎
hi

hi