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コンパートメントNo.6のTANSのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.5
ワーキングクラス版の『ビフォア・サンライズ』を喰らいやがれ、っていう感じの一作。お洒落さゼロ、サブカルゼロ、地味なロマンス、それでも結果として、彼女は本の中に書いてある難しいことよりも、「心の声を信じなさい」の世界に行ったわけだ。最初は全く階層の異なる野蛮な男に見えた寝台列車の同席者は、しかし「いまここにあるもの」で楽しんで生きることができる人間として、観念的・依存的になっていた彼女の人生を笑わずに受け止めてくれる。フィンランドから世界の果てのような場所にたどり着いた時、彼女が見つけたものは何だろう。映画的義務のように煙草を吸い続ける男と女。雪道でぐいぐい飛ばしていく車の走行にヒヤヒヤする。
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