染夫木智也

崖上のスパイの染夫木智也のレビュー・感想・評価

崖上のスパイ(2021年製作の映画)
4.0
007、ミッションインポッシブルみたいなド派手さは無いが、歴としたスパイ映画だ!!

「がけうえ」と書いて「がいじょう」と読む、崖上のスパイはあの世界的に有名な巨匠チャン・イーモウが監督した作品。チャン・イーモウはヴェネツィア国際映画祭、ベルリン国際映画祭、英国アカデミーなど世界の数々の賞を取ってきた中国の映画監督で、2022年には冬季北京オリンピックで開会式、閉会式の総監督も務めた方です。

そして、本作「崖上のスパイ」に関しては中国版アカデミー賞問といわれる金鶏賞で監督賞を受賞された作品。

Storyは1934年、ソ連で特殊訓練をうけた4人のスパイたちが満州国のハルビンという町に潜入しようとする話。潜入する目的は日本軍の秘密施設から脱走した男性を保護し、日本軍の罪を世界中に知らせることだったが、実は既に捕まっている仲間の裏切りによって作戦がばれていた。そんなピンチな状況の中、任務を果たすことはできるのか?

満州国とは、日本軍が占領した中国の満州国に創った日本の傀儡国家。いわゆる日本の支配国で、そこには中国人のみで日本人はでてこない設定である。

「見応えある渋めのヒヤヒヤスパイ映画」であた。

まず、最初から超ピンチな部分。
4人は極秘ミッションに挑む中、すでに相手に作戦がばれている状況。でも4人はバレていることを知らない状況というのがかなりピンチ。
そのため、敵が仲間のふりをしていたり、実は暗号がバレていたりする中、その判断ヤバいって!!っと見ていてヒヤヒヤさせられる雰囲気が絶妙によかった。

その他にも、巧みな心理戦、頭脳戦が素晴らしかった。
「ミッションインポッシブル」「007」みたいなハイテクな道具や携帯も存在しない世界、連絡手段は手紙、直接会って話すくらすしかない。
どうやって相手にバレずに連絡するのか、特に中盤に出てくる2重スパインが立ち回り方がすごすぎて、思わず「めっちゃ頭いいやん」って見ながらつぶやくほどすごかった。誰が味方で誰が敵なのか、緊張感あるやりとりなど本当に見事、これぞ本格的なスパイ映画な気がする。

ちょっと気になった点としては、見慣れていない中国映画のためか、名前と顔の一致が難しい、それに加え見た目がコナン君の黒ずくめの服装みたいなので、だれがだれかわかりにくい。
あと、タイトルからもわかる通り、崖っぷちのスパイがメインテーマで進むため、ミッションの話がかなり薄い。日本軍の罪が具体的になんなのかなど背景の説明がないので、ストーリー性が薄い気がした。

とはいえ、崖っぷちのスパイたちを描きたかったからこその、頭脳戦、アクション、銃撃戦、ごうもんシーンなどド派手ではないけど、見応えがあるシーンも多いので、できるだけ集中できる環境でぜひ見てほしい。

あと、劇中にでてくる暗号解読用の本とデザインをあわせているパンフレットは見た目もよいし、内容も素晴らしかったのでおすすめ。