染夫木智也

貴公子の染夫木智也のレビュー・感想・評価

貴公子(2023年製作の映画)
4.0
パクフジョンと期待しないで見れば満点

監督は「新しい世界」「THE WITCH/魔女」など韓国ノワールの巨匠パク・フジョン。
ノワールとは、1940年代にハリウッドで描かれた犯罪映画を「フィルム・ノワール」と呼び、韓国でも最近犯罪組織を描く作品が増えてきたことにより「韓国ノワール」と呼ばれるようになった。

本作の話は
フィリピンで暮らす青年マルコは病気の母の治療費を稼ぐために地下格闘で戦っていた。ある日、一度もあったことのない韓国人の父親が自分を探しているという情報を聞き、父に会いに韓国へ向かう。韓国へ向かう途中で出会った謎の貴公子に追われることに。この貴公子とは?そしてマルコの父親とは?

マルコを中心として、敵か味方かわからない存在が次々に出てくる。
物語が進むにつれて、登場人物それぞれの想い、孤独や嫉妬などをうまく描き、予想できない展開へと続いていく。それがテンポよく、軽快に見れるため、万人受けするエンタメムービーとなっていた。

一番の本作の魅力は「貴公子」の造形
冒頭、貴公子が捕らわれているシーンから始まるが、そこから何とか抜け出し、捕まえていた奴らをボコボコにするんやけど、満面の笑みのまま人を殺す不気味さ。これが惹きつけられる。

容姿はパリッと決まった髪型に、高級スーツで決まっていて、完璧主義に見えるがただのかっこつけ。2枚目に見える3枚目。
英語が下手って言われると動揺したり、雨に濡れること嫌がり雨の中に敵が逃げると追うことをあきらめる。走り方がターミネータみたいやけど、顔は笑顔。正直強いか弱いのかわからない雰囲気も魅力。

貴公子を演じるキャストはキム・ソンホ。
海街チャチャチャで大ブレイク、本作でなんと映画デビュー。
しかもいままでロマンティックコメディに出演しており、バイオレンス系は珍しいみたい。やけども貴公子の雰囲気が最高にあっていた。

アクションシーンもよくできており、特にラストのアクションシーンは激しさのあまり体重が3キロへったらしい。

映画自体よくできていたけど、パク・フジョン監督の作品として期待するとちょっと期待はずれだった。
というのも、この監督は重く、シリアスな作風が魅力的だったか、本作では貴公子のキャラユニークであり、コメディの雰囲気が結構強く感じた。まさに冷たい熱帯魚の園子温監督が新宿スワンをとったくらい、その監督でとる意味あるかなって思ってしまった。

とはいえ、映画自体は面白いので気になる人はぜひ