TakayukiMonji

春原さんのうたのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

春原さんのうた(2021年製作の映画)
4.1
前からクリップしていた、杉田協士監督作品を初鑑賞。

短歌を原案とした作品。観たことあるようで
こんな邦画はあんまり観たことない。まだまだ映画沼は底知れないなぁ。

上映後のトークショーで監督自身が”映画と短歌の共通点がある。人生の全てではなく、人生の一部を切り取る作業が類似している”と言っていた。なるほど!
まさに、その人生の一部を切り取ったような作品で、一見すると変化のない日常的なシーンの積み重ねに絶妙に差し込まれていく機微が素晴らしい。俳句とか、短歌みたいな侘び寂び。

基本的には固定カメラで、登場人物に被さるように、あえて重ねられていく人々が、まさに日常的な演出。具体的な説明がないのに、会話やシーンから想像が広がっていく。日常的な騒音のメリハリがすごいんだけど、ほとんど実際の撮影の音は使ってないらしい。これ全て演出なんだーと感心した。
アドリブのような演技も自然。

“喪失と再生”、”生と死”というテーマは最近では中川龍太郎監督の作品が思い出されるが、その作品群とは違った独自の魅力を放つ作品。
杉田監督は黒沢清監督の助監督をやっていたようだが、それも納得のシーンがいくつかあった。死者の扱い方が自然すぎる。
春原さん!!
濱口監督の「天国はまだ遠い」も想起される。


今回初めて、菊川ストレンジャーへ。決して大きくない空間なのに、集中力を高めてくれる作りで、素晴らしい劇場だった。
今後のラインナップも見逃せない感じだし、要チェックな劇場。
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