UberLoser

アリスとテレスのまぼろし工場のUberLoserのレビュー・感想・評価

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退屈はしなかったが、なんとも消化不良。
加えて、好みの問題もあるとは思うが、いろんな意味で気持ち悪さが残る。

以下ネタバレ。




特に気持ち悪いのは。
なぜ親子どんぶり設定にしてしまったのか。
なぜエロ寄りな狼少女設定にしてしまったのか。
なぜ子供じゃなくて中途半端に「少女」にしてしまったのか。
このあたりにつきる。好みの問題かもしれないが。

設定は、同じ一年をなん度も繰り返す萩尾望都の短編を思い出した。
本作はそれかと思いきや、どうやらずっと冬で時間が止まっている。
繰り返しというよりも「進まない時」を生きている。

ずっと冬ならば、それをもっと早い段階で視覚的に教えて欲しかったし、
温度を感じる/感じないという部分も、曖昧でよくわからない。
日記をつけさせているということは、日数は数えているのか?
街の外に出られない。外から中にも来られない。
だったら食料はどうしてるんだ?自給自足か?
なぜか減らない食料、って感じなんだろうか。
彼らの生活が見えないし、よくわからない。

ぼかしていいところと、設定として見せた方がいいところが
ぼんやりしており、見ている側としては不完全燃焼が続く。

中盤で、ひび割れの向こうが「時間が進んでる現実」だとわかる。
つまりこの街の彼らは断絶されて時間から置いて行かれてしまったのか。
と思いきや、どうやら現実にも彼らが存在しているらしい。
パラレルワールドの話のようだったのだが、そこも曖昧なままで不完全燃焼。
現実の主人公とヒロインが結婚して子供を産んでいるようだが、
ヒロインがツンデレで「私じゃない!」とか言っちゃうもんだから、
ますますわかりにくくなっている。

すべてを説明する必要はないけれど、
世界の「謎」とその「回答」は基本設定としてわからせた方がよかったんじゃないかなぁ。

ひび割れの向こうが「時間が進んでる現実」で、
感情を動かした人々がひび割れて、消える(消される)。
それってつまり、現実に戻れたのでは?と見えなくもないが、
あの世界の人たちにその発想はまったくないようだ。

SFとしては、その可能性に触れたうえで、
「やっぱりそうではなく、単に消滅しているのだ」
「なぜならあちらにも自分がいて、今ここにいる私たちは分岐した自分なのだ」
「私たちは消えるしかない運命らしい」
という流れを見せるなりしたほうがよかったのではないだろうか。
ここがはっきりしないと、彼らの運命も、悲しみも、
その上で「生活を続ける」という決断も、胸に迫ってこない。

彼らがこの世界を知る過程〜どう理解していったかの部分が描かれていないのに、
彼らがいつの間にか、すべてを理解している風になっている。
観客には、彼らが何をどう理解したのかがわからない。
だから置いてきぼりになる。
作り手が、自分の頭の中の世界を表現しきれていない。
見ているこちらももどかしい。
誰かアドバイスしてあげる人がいなかったのか。
プロデューサーは何をしていたのか。

現実から来た少女は、要するに「世界の幸せのために生贄にされた子供」
なのだろうけれど、そこに至った理屈も描かれていないので、
なんで少女が監禁され続けていたのか、結局のところよくわからない。
その理由が「単なる盲目なおっさんの思い込み」というのは、
主人公の父と叔父もかかわっていたぶん、納得が行きづらい。

なぜ少女がこっちに来てしまったのかもよくわからなかったが、
終わりの方で現実のタクシー運転手が言っていた「神隠しもあった」
というのは、街全体のことなのか、少女のことだったのか?

完全にパラレルな世界だとしたら、街の人たちの分身があの世界に
閉じ込められていることは誰にも知られていないわけで、
神隠しと言われることもないような気がするが、
もしかして帰れた人たちがいて、そう表現していたとかなのだろうか。
可能性はいくつかあるが、ありすぎるように思える。

わからないところだらけでも「おもしろかったー!」となればいいのだが、
そうでもないので、なんとも消化不良な映画だった。
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