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モガディシュ 脱出までの14日間のmatchypotterのレビュー・感想・評価

4.2
素晴らしい。面白い。
今年結構観ている韓国映画の中でも群を抜いて良い。

モガディシュ。1980〜90年に事を発するいわゆるソマリア紛争。
韓国映画だが、舞台は韓国ではなく、アフリカのソマリア。なのに“南北問題”。
アフリカのソマリア国内の容赦ない反乱軍との紛争の中で“南北問題”を描く衝撃。

ソマリアに駐在する韓国大使館と北朝鮮大使館。
普段はどちらが有益な国交を築けるかの駆け引き、足の引っ張りあい。

韓国よりも先に国交を築いている北朝鮮側に負けじと頑張る韓国と、先を越されまいと外交工作を仕掛けて邪魔しにきたりする北朝鮮。

そんな鍔迫り合いが突然の国内の反乱軍と政府軍の衝突により形を変えていく。

モガディシュ近辺に反乱軍が侵入し、ほぼほぼ戦時下状態に突入し、右も左も銃を持って何かを叫びながら襲いかかってくる暴徒、暴徒、暴徒。

そんな中で、逃げる北朝鮮大使館の人々。
しかし、方策尽きて、万事休すで絶体絶命の窮地でたまたま目の前に韓国領事館。

わだかまり満載の大使同士のやり取りの末、渋々迎え入れる韓国大使館。

普段は絶対に馴れ合わず、むしろ、馴れ合うことを禁じさえされてる両国が、この死と隣り合わせのモガディシュから何とか脱出の糸口を見つけるために手を組む、、、、のだが。

他の映画でも多く取り上げられてる北と南の話。
同じ半島に身を置き、同じ民族の北と南。隔たりは38度線の国境だけ。この歴史的にも根深い隔たり。
思想も、政治も、文化も、風土も、何もかもが違う国柄。

そのルーツは同じでも絶対的な違いの元に生きてきた2つの国の外交官たちが目的を1つに、ただただ生き延びるために奔走する姿はとても胸を打つ。

感動的とかではなくて、そのことの意味を超えて前に進もうとする姿が何とも言えない衝撃を与えてくる。

キムユンソク、『チェイサー』の人。この人、好き。
この人の、あけすけにモノを言うキャラと、ぶっきらぼうなようでちゃんと先々物事を考えながら冷静に、おおらかに、そして毅然とした言動がとても記憶に残る。

そして、ただただ北と南の問題を淡々と描くばかりでなく、ソマリア紛争の戦時下の真っ只中を切り抜けていくハラハラドキドキの逃亡劇。

色んな要素をすべからく織り交ぜて、無駄なく絡ませた作品。

ソマリア紛争から見れば、南北問題なんか「そんなの知らねぇよ」だろうし、南北問題から見れば「ソマリアで紛争に巻き込まれるとか聞いてねぇよ」だろうし。

それを見事に調和させて融合させた映画。

南でも北でも起きてる話ではなく、遥か遠方の“アフリカの角”と言われるソマリアで、これ以上ない命の危機に直面した果てに越えられる壁があることを目の当たりにする。


F:1781
M:1140
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