真一

モガディシュ 脱出までの14日間の真一のレビュー・感想・評価

4.0
ドキドキの脳内旅行!
満たされる知的好奇心!
手に汗握るシーン!

 準戦争状態の韓国と北朝鮮。双方の外交官が、相手より多く友好国をつくろうと、互いに不馴れなアフリカで外交工作を繰り広げるという設定が、そもそも面白すぎる。

 しかも舞台は、アフリカで最も劣悪で、この世の地獄と言われた、あのソマリア!映画「ブラックホークダウン」の地で、韓国と北朝鮮が最後に呉越同舟を演じるという、ご飯もおかずもメガ盛り級のストーリーだが、なんと実話だという。

 内戦下で失われる外交特権。大使館まで襲撃され、命の危険にさらされる南北双方の大使、参事官と家族たち。絶体絶命の中で、互いに手を差しのべるようになる描写にはリアリティがある。

「もう対立はたくさんだ」
「共存の時代を目指そう」

 作品のメッセージは明確だ。韓国では大ヒットしたと聞く。韓国の皆さんの心に刺さったのだろう。日本に住む私の心にも、ガッツリ刺さった。

現実の北東アジアをみれば、米韓同盟と北朝鮮の緊張は高まるばかりだ。合同演習にミサイル発射で報復。ミサイル発射に合同演習で報復。このままエスカレートすれば偶発的な戦争が勃発しかねない
と双方が懸念しているのに、互いに引けない状況が続く。

 どうしたらいいのだろうか。我らが日本政府は、北朝鮮はおろか韓国とも仲良くしたくない態度が見え見えで、仲介役など求めるべくもない。

 映画を観て思う。尹錫悦君と金正恩君を、モガディシュの土煙が上がる道路に置き去りにし、銃弾の雨の中を一緒に走らせれば、吊り橋効果で仲良くなれるのではないかー。やっぱ無理か(´-ω-`)

本作は、西アフリカのモロッコでロケしたというだけあって、熱風と砂ぼこりを感じさせてくれる。アクションシーンも、まずまずだ。

 同時に、ソマリア人が理解不能の殺戮マシーンか汚職屋としてしか描かれていないところに、東アジアの一面的な対アフリカ観が表れている気がした。

 思い起こすのが、人々がゾンビの間を右往左往するウォーキングデッドだ。これに当てはめれば、ソマリア人はゾンビの群れ。韓国大使館と北朝鮮大使館は対立する人間が住む砦。そして両陣営に分かれた人間は、ゾンビを避けながら行き来するーこんな感じだろう。たから、恥を忍んで言えば、私も本作品の世界にすっと入れた。アフリカへの見方が一面的な東アジア人だから。

 大好きな韓国料理と魅惑のアフリカ料理を、同時にいただいたような濃厚で満ち足りた121分間でした。
真一

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